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第3学期終業式

2025年3月25日 17時04分
校長室より

第3学期の終業式の式辞として、次のようなお話をさせていただきました。

改めまして、皆さん、おはようございます。今日は3学期の終業式です。

先週は、皆さんが1年間過ごしてきた教室や校舎にワックスがけをして、とてもきれいにしてくれました。昨日は合格発表でしたが、これで令和7年度の新入生を、気持ちよく迎えることができます。一生懸命ワックスがけの作業に取り組む皆さんの姿を見て、改めて川高生の良さを実感しています。

私は、川之石高校に、2年前に赴任してきました。最初に感心したのが、皆さんが廊下ですれ違うたびに、「こんにちは」と挨拶してくれること。次に感心したのが、皆さんが、とてもまじめに清掃に取り組んでくれることでした。

清掃で特に感心したのは、最初に迎えた定期考査、1学期中間考査の期間中の掃除の時間です。それまで勤務してきた学校では、考査中の掃除の時間というと、その日の試験科目のノートや参考書を見るのが優先で、掃除ができていない、という生徒をよく見かけました。それが、川之石高校では、そのような姿を全く見かけなかったのです。そのことを近くにいた先生に話すと、「普通じゃないですか。」と言われ、少し拍子抜けしたことを覚えています。

私は、まじめに掃除に取り組む生徒を普通と言える、この川之石高校の伝統は素晴らしいと思います。4月に入学してくる新入生は、先輩である皆さんの姿を見て学び、出身中学校の生徒から川高生へと変わっていきます。ぜひ、皆さんが先輩たちから受け継いだ川高生の良い伝統を、自分たちで途切れさせることなく、新入生に伝えてあげてください。

最後に、今回、皆さんに、このようなことをお話ししようと思う中で、思い出した哲学者がいるので紹介します。ドイツの哲学者カントは、やりたいことを、やりたいようにやることが自由ではない、と述べました。例えば、「掃除の時間にノートを見たい、だから見る」。これは、「見たい」という欲求によって、自分の行動を決められてしまっているので、自由とは言えない。「ノートは見たいけれど、今は掃除をすべきなので、掃除をする」。これは、見たいという欲求に縛られず、自分が正しいと思った行動できている。これが自由だ、というのがカントの考えです。

明日から春休みとなります。「やりたいこと」と「やるべきこと」を、しっかりと区別して、充実した春休みを過ごし、新学期には、今よりも少し成長した皆さんと会えることを期待して、式辞とします。

第3学期球技大会

2025年3月25日 17時02分
校長室より

球技大会の開会式で、次のようなお話をさせていただきました。

皆さん、おはようございます。3月も半ばとなって、運動に適した季節となってきました。ニュースでも、毎日のように、メジャーリーグの大谷選手のニュースが流れています。

ここ愛媛でも、いろいろなスポーツを観戦することができ、例えば今日の球技大会の種目でいうと、バスケでは、オレンジバイキングスが苦戦しながらも頑張っていますし、サッカーでは、先日の愛媛FCとFC今治の対決で盛り上がりました。テニスでも、愛媛国際オープンという中四国・九州では初、日本でも上から2番目のグレードの大会が毎年開かれています。

スポーツは、するのも見るのも楽しいものですが、それは、目標に向かって努力しそれを達成する喜び、仲間との協力や対戦相手との真剣勝負を通して育む友情や尊敬、それらを観戦することで得られる勇気や希望、などを感じることができるからではないでしょうか。

球技大会も同じです。クラスの仲間と協力し、相手クラスのチームや審判を尊敬しながら、真剣に戦い、また全力で応援することで、みんなが楽しめる素晴らしい大会になるのだと思います。

今日の球技大会は、3年次生が卒業し、1・2年次生だけで行う、最初の大きな学校行事です。

「勝より笑!何が何でも楽しもう!」、というスローガンどおりの、笑顔あふれる大会となるよう期待して、開会のあいさつとします。

卒業式

2025年3月4日 11時41分
校長室より

卒業式の式辞として、次のようなお話をさせていただきました。

校庭の木々の芽も膨らみ、日ごと春めく今日の佳き日に、多くの御来賓の皆様、保護者の皆様の御臨席を賜り、令和六年度 愛媛県立 川之石高等学校 第七十六回 卒業証書授与式を挙行できますことは、我々教職員一同にとりまして、大きな喜びであります。厚くお礼を申し上げます。

さて、ただ今、卒業証書を授与いたしました八十一名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんが本校に入学した、令和四年からの3年間で、世界は大きく変わりました。ロシアのウクライナへの侵攻と戦闘の継続は、人権や国家主権、集団安全保障といった近代国際社会の秩序を揺るがせました。新型コロナの感染拡大とwithコロナの新しい生活様式は、対面による人との交流や働き方を見直す契機となりました。そしてChatGPTのサービス開始に象徴されるAIの進化は、あらゆる場面でこれまでの常識を覆そうとしています。

私たちは、このような変化に、否が応でも向き合っていかなければなりませんが、これは簡単なことではありません。時には、変化に取り残されているような不安を感じたり、変化にいち早く対応し成功している人を、うらやましく感じたりすることもあるでしょう。私自身、そう感じたことがある一人ですが、最近、一つの文章に出会いました。

御存知のように、本校は今年度、110周年を迎え、記念行事等を執り行うことができました。その過程で手に取った、70周年記念誌に掲載されていたのが、本校卒業生で俳人の、坪内稔典先生による記念講演の記録です。講演の中で、先生は、

「私が確信したことは、『その時代に、もてはやされるものは、実は、それほど大事なものではない』ということでした。みんながもてはやすもの、その時代に一番いいと思われているものは、多くのものを見捨てて成り立っています。だけど、人間の本当の幸せとか、本当の価値、本当の喜びというものは、その時代が見捨てているものの中に、息づいていると思うようになったのです。」

「私が言いたいのは、日常のささやかな事柄が、実は、人間の生き方に大きく影響するのだということです。私は今も、川之石高校で学んだこと、身に付けたことを誇りに思い、自分の考え方の基本にしているのです。私にとって、高校時代を思い出すことは、自分の生き方を振り返る原点になっています。」と述べられています。

卒業生の皆さん。皆さんは、これから、新しい世界で、新しい価値観や考え方に出会うことになるでしょう。その時には、新しいものを無批判に受け入れるのではなく、ここ川之石で、家族や友人たちと共に育んできた価値観や考え方と、対比してみるよう心掛けてください。これまで育み、身に付けたものを、自分の中心にしっかりと持ち、その上で、新しいものを一つ一つ吟味し、自分の周辺に配置していくことで、皆さんの人間としての幅、包容力が、大きく広がっていくものと期待しています。

最後になりましたが、保護者の皆様におかれましては、本校の教育活動を温かく見守っていただき、多大なる御支援と御協力を賜りましたことに、心から感謝いたしますとともに、大切に育ててこられたお子様が、本日、卒業の日を迎えられましたことに、改めてお喜びを申し上げます。

卒業生の皆さんは、保護者の方や、お世話になった方々に、感謝の気持ちを伝えてください。「ありがとう」と言葉にして伝えることの大切さは、これからも変わることはありません。感謝の気持ちを胸に、新しい世界に飛躍していく皆さんの、御健康と御活躍を心から願い、式辞といたします。

令和七年三月一日 愛媛県立川之石高等学校長 矢野重禎

同窓会入会式

2025年3月4日 11時34分
校長室より

同窓会入会式の挨拶として、次のようなお話をさせていただきました。

おはようございます。同窓会役員の皆様の御臨席を賜る中、ただいま、川上 同窓会長様より、本校同窓会への入会を認められた81名の皆さん、入会おめでとうございます。

ただ今、会長様の御挨拶にもありましたとおり、本校は、今年度、創立110周年を迎えた伝統校であり、伊方農業学校、川之石高等女学校以来の卒業生は、1万7000名以上、昭和23年に川之石高校となって以降でも、1万4000名以上に上ります。コロナにより一時期中断していた同窓会も、コロナが5類に移行したということで、昨年度から再開され、今年度も、関西支部、関東支部、そして松山支部で開催された同窓会に、それぞれ多くの方々が出席されました。私も出席し、交流させていただきましたが、県外、県内において、本校の先輩方は、経済界や文化・芸術界で、大いに活躍されています。

本日、こうした先輩方の大きな輪の中に、皆さんも加わることになりました。同窓会の活動を通して、先輩方の経験や知恵を学び、同期生との絆を深め、後輩達を励ますことは、皆さんの人生を、より豊かにしてくれることと思います。本日の入会式を機に、ぜひ同窓会の活動に積極的に参加してください。

最後に、同窓会の発展と皆様の御健勝と御多幸を祈念いたしまして、挨拶とさせていただきます。本日は、おめでとうございました。

たちばな66号

2025年3月4日 11時27分
校長室より

「たちばな66号」に、『母校に誇りを -ここ川之石にある学校として-』の題で、次のような文章を掲載させていただきました。

川之石高校は、今年、創立110周年を迎えました。卒業生は1万7千名を超え、全国各地・各界で目覚ましい活躍をされていること(今回の110周年記念式典では、本校卒業生で、太陽パーツ株式会社取締役会長の城岡陽志様に、前回の100周年記念式典では、同じく本校卒業生で、俳人・国文学者の坪内稔典様に御講演をいただきました。)、また、卒業後も地元に残り、地域社会で中心的な役割を果たされている先輩方が多くいらっしゃることは、私たちにとって大きな財産です。

そのような本校ですが、令和5年3月に愛媛県県立学校振興計画が発表され、令和8年度に八幡浜市内3校が統合されることになっています。農業系列の生徒はそのまま継続して、福祉系列の生徒もしばらくの間は、現在の川之石高校のキャンパスで学ぶことになっていますので、現在の川高から生徒の姿がなくなるわけではないのですが、「川之石高校」の校名が、あと数年でなくなるというのは、やはり寂しいものだと感じています。

その「川之石高校」という校名についてですが、私自身が校長となって初めて聞いた話として、「愛媛県で、郡市町でない、地区の名称が校名となっている唯一の高校である」というものがありました。調べてみると、川之石高校は、昭和23年に、「伊方農業学校」と「川之石高等女学校」を母体として設立されましたが、この時、川之石は、西宇和郡川之石町という独立した町であったようです。とすると、町名が校名となっていますので、特別な校名ではなかったということになりますが、その後、昭和30年に、川之石町・磯津村・宮内村・喜須来村が合併し保内町となった際、校名の変更が検討されたとの記録も見つけました。保護者等の意見は、「川之石」高校が多数で(「保内」高校、「橘」高校、「青石」高校が少数)、川之石の校名が継続されることになり、町名でなく地区名が校名となっている県下唯一の高校、ということになったようです。本校の校名である「川之石」が、地域の方々に愛された名前であることを示したエピソードと言えそうです。

そういう私も、ここ「川之石」には、とても親しみと愛着を感じています。私は、地歴・公民科の教員ですので、校長として赴任する前から、川之石の街を巡検するなどして知っていましたし、自分の子供が小さい頃には、もっきんろーどや金刀比羅神社を家族で散歩したこともあります。ですが、やはり特に好きになったのは、校長になってからでしょう。私は、時間があるときに、校舎近くの山にある和田4号園辺りまで歩いてみたりするのですが、その途中の山腹から見下ろす川之石の風景は、とても素晴らしいものです。

まず、海を見ると、きれいな深い湾が広がっています。湾の沖の方向に目をやると、湾の出口は半島で囲まれ狭まっており、台風などの波や風に強い港だなと感じます。地図を見ても分かりますが、八幡浜港は、ラッパのように沖に向かって広がっていて、波風には弱そうです。港としては川之石港の方が優れており、かつて川之石が海運で発展し、伊予の大阪と呼ばれていたというのも頷けます。今から120年ほど前の明治時代には、川之石村で約500艘の船を所有し、毎日10艘から20艘の船が、関西や九州との交易のために出入港していたとの記録がありますので、何百艘もの船が、この湾に浮かんでいたという、その壮観を想像しながら、「もし長浜へと通じるルートの山がもう少し低ければ、あるいは鉄道が川之石を通っていれば、南予の中心は川之石だったのではないかな」、「実際、紡績会社も電灯も四国初、国立銀行は愛媛初だったのだからな」、「すると川之石高校も、今とは違った学校になっていたかもしれないな」、などと思いを巡らせています。

次に、山を見ると、この季節(12月の上旬にこの原稿を書いています。)、多くのみかんが鈴なりになっています。「うまいわ にしうわ」という西宇和みかんのCMを見たことがあると思いますが、愛媛県の西南に位置する西宇和地域(八幡浜市・伊方町・西予市三瓶町の2市1町)は、100年以上の歴史を持ち、県内一の生産量を誇るみかんの産地であり、その中でも、八幡浜市は、数々の有名ブランドみかんの産地として知られています。川之石の風景を見ても分かりますが、この地域はリアス海岸が続き、陸地も起伏のある傾斜地で平地が少ないことから、農耕には不向きな土地でした。しかし、気候は温暖で日照量が多く、水はけもよいため、みかん栽培には最適でした。そこで西宇和の人々は、山を耕し、石を積み上げて段々畑を作りました。山から見える美しい段々畑からは、川之石のみかん農家の想いを感じることができます。みなさんも、県外の人と話すことがあれば、愛媛のみかんの中でも、外皮が薄く、また果肉を包む膜はさらに薄く、濃厚な甘さと酸味を持つ西宇和みかんを、自慢し紹介できるようになってください。みかんの段ボールに、西宇和の頭文字である「N」の字をかたどったNマークを探し、見つけた際には、空・海・石垣から照らす「三つの太陽」の話を付け加えながら紹介できるようになれば、なおよいと思います。

最後に、風景として見えるものをあげると、海に向かって山と山の間に挟まれたように広がる平地と、そこを流れる喜木川と宮内川という二つの川があります。この平地ですが、川之石は昔から埋め立てが盛んで、その埋め立てには、明治から大正にかけて、川之石の主要産業であった、銅山の廃石も使われました。保内中に向かう道で、喜木川に架かる橋から下をのぞくと、澄んだ水の川床にはきれいな石が並んでいて、これも埋め立ての名残なのかな、などと考えたりします。別子銅山に次ぎ四国第2位の産出量を誇った銅山も、川之石を語る上で欠かせないものだと思います。

また、もう一つの川である宮内川の右岸には、伊予の青石を石材とした矢羽根積の護岸が見られます。青石が織りなす綾が美しい護岸は、選奨土木遺産の認定を受けていて、左岸のもっきんろーどから眺めることができます。青石は、段々畑や、神社やお寺の石積みに使われていますが、その石積みは、現在では再現できない技術を用いて作られていると言われています。皆さんは、子供の頃からこの青石を見慣れているかもしれませんが、このような石や石積みは、ここより南では見ることができない、貴重な風景なのです。

以上、私は、皆さんに、「川之石」のことをしっかり知っていただき、将来、故郷を離れることがあっても、川之石のことを、誇りを持って紹介できるようになってほしいと思っています。そのため、昨年の「たちばな65号」でも、ここ川之石の、経済・産業、人物・精神面の素晴らしさについて書かせていただきました。そして今年、この「たちばな66号」では、主に地理的な素晴らしさについて書いてみました。

地歴・公民科の教員ですので、内容の好みに偏りがあると思いますが、昨年のたちばなと併せて読んでいただくと、より川之石の素晴らしさを知っていただくことができると思います。これ以外にも、養蚕や龍潭寺など、川之石で触れたいものはまだあるのですが、また機会があれば、書かせていただこうと思います。

図書館報

2025年3月4日 11時21分
校長室より

図書館報に、「文字は超える」の題で、次のような文章を掲載させていただきました。

先日、NHKで放送中のアニメ「チ。 -地球の運動について-」を観ていると、印象的なシーンがありました。舞台は15世紀のヨーロッパ、学ぶ機会がなく、文字を読むことができない登場人物が、

「文字が読めるって、どういう感じなんですか?」

と問い、そう問われた、文字を読むことができまた優秀な能力を持っているのですが、女性であるがゆえに学問の道を閉ざされてしまっている登場人物が、

「本当に文字は凄いんです。アレが使えると時間と場所を超越できる。200年前の情報に涙が流れることも、2000年前の噂話で笑うこともある。そんなの信じられますか?私たちの人生はどうしようもなくこの時代に閉じ込められてる。だけど、文字を読む時だけは、かつていた偉人たちが私に向かって口を開いてくれる。その一瞬この世界から抜け出せる。文字になった思考はこの世に残って、ずっと未来の誰かを動かすことだってある。そんなの…まるで、奇跡じゃないですか。」

そう答える、というシーンです。

「文字は時間も場所も超越する。」と、そこまで大げさなことではなくても、本は、それが何十年も前に買ったものであっても、手元に残しておけば、いつでも何度でも読むことができます。たとえその作者が亡くなっていたとしても、その本を開くと、その作者に出会えたような気持ちになれますので、読者としては、その作者が生きていても亡くなっていても、あまり関係ないのかもしれないなとも思います。一つ残念なのは、新しい本が出ないということでしょうか。ですので、古本屋さんなどで、その作者の、読んだことがなさそうな本を見つけるとパラパラめくって、「読んだ気もするし、持ってるかもしれない。でも持ってなかったら、今を逃したらもう買えないかもしれない。」などと悩んだ末に買い、家に帰って本棚を見ると同じ本が並んでいる、という失敗を何度も繰り返しています。先日も(というか、これを書いている日からすると昨日)、松山の古本屋さんで、ナンシー関さんの本を見つけ買ったのですが、案の定、家には同じ本がありました。

ナンシー関さんは、もう20年以上前に亡くなっているので、知らない人の方が多いと思います。Wikipediaによると、「世界初の消しゴム版画家、コラムニスト。独特の観察眼による『テレビ批評』と、その挿絵に入れた著名人の似顔絵『消しゴム版画』で、社会そのものを批評していた。」と紹介されています。人や社会を批評する視点と文章は頭抜けていて、今でも、「この人、この出来事を、ナンシーさんならどのように批評するかな、ナンシーさんの意見を聞いてみたいな」と思うことが、年に何度かあります。

そのナンシーさんの言葉で、ふと、何かの拍子に思い出すものに、

「いくらおでんの中で玉子が好きで、どのタネも70円均一であっても、セブン・イレブンで玉子ばかり7個も8個も買うというのは節操がない。自分のカネで勝手だろうが、という根性が無節操なのだ。私も玉子は好きだ。でもおでん一皿に玉子は1個。何に気兼ねしているということではない。外してはいけない心のタガ、それが節操。」

というものがあります。今回、この言葉をネットで検索すると、ナンシーさんの言葉の中で心に残っているものとして挙げている人がかなりいて、少しうれしくなりました。

ナンシーさんが亡くなってから書かれた評伝に、『心に一人のナンシーを』というものがありますが、この言葉の通り、ナンシーさんは、今も読者の心の中にいて、その人たちの考え方や行動に目を光らせ、またその人たちは、ナンシーさんに批評されても大丈夫かどうかということを一つの基準として、考え行動しているのだと思います。

先行きが不透明でこれまでの価値観が大きく変化し、よくもわるくも「自分」の考え方や行動の自由度が増している今だからこそ、心の中に自分を律する何かを住まわせることが必要なのではないでしょうか。その何かに、時代や場所を超えて出会うことができる、それが文字であり読書なのだと思っています。

総合発表会

2025年3月4日 10時25分
校長室より

総合発表会の開会行事と閉会行事で、次にようなお話をさせていただきました。

【開会行事】

皆さん、おはようございます。

本日は、令和6年度、第27回、川之石高等学校総合発表会を、保護者の方々、地域の方々、また、学校関係者の方々に、御参観いただきながら    開催できますこと、心から嬉しく感じています。

さて、本日の発表会は、南予で唯一の、総合学科である本校にとって、とても大切な行事です。

総合学科は、生徒の皆さんが、自分の個性を伸ばし、主体的に進路を決定し、意欲的に学べるよう、普通科と、農業・商業・工業・福祉などの職業学科に加わる、新しい第3の学科として生まれました。そして、その総合学科の特長ともいえる、大切な取組の一つが、「総合探究」です。1年次生は「産業社会と人間」、2年次生は「総合探究Ⅰ」、3年次生は「総合探究Ⅱ」、の授業の中で、皆さんは、自分の将来像を描き、課題を見つけ、その課題の解決に向けた研究を行います。

今の変化の激しい社会では、日々、新しい問題が起こっており、また新しい問題であるだけに、その解決方法も定まっていないものが、数多くあります。3年間の「総合探究」の取組は、そのような問題に対して、皆さんが、どのような態度で臨むのか、自分自身で考え、決めていくための、訓練の場でもあるのです。そして、その成果を、みんなで共有する場が、この総合発表会です。

本日、代表として発表する生徒の皆さんには、自分の研究に自信を持ち、堂々と発表してもらいたいと思います。

また、参観する生徒の皆さんには、発表内容からはもちろん、発表者の、研究に取り組んだ気持ちや姿勢からも多くのことを学び、自分の研究を  広げたり深めたりする手掛かりとしてほしいと思います。

本日の発表会が、皆さんにとって、貴重な成長の機会となることを期待して、開会のあいさつとします。

【閉会行事】

本日、発表してくれた、1、2、3年次生の代表の皆さん、お疲れさまでした。

最初に、3年次生10名の代表による、「総合探究Ⅱ」の研究発表について感想を述べたいと思います。

どの発表も、「なぜ、それを研究するのか」という課題意識が明確で、また、「研究内容を、どのように表現すれば、皆に伝わりやすいのか」ということを、よく工夫した、「さすがに代表者の発表だ」、という、説得力に富んだものでした。これは、1年次の「産業社会と人間」のライフプランや、2年次の「総合探究Ⅰ」のディベートの取組を通して身に付けた、学びの成果であると感じました。この後、審査結果の発表があり、最優秀、優秀が選ばれますが、誰が選ばれてもおかしくない、レベルの高い発表であったと思います。そしてそれは、今日、発表してくれた、代表者10名以外の皆さんの研究にも、言えるのではないかと思っています。

私は、これまでに、「総合探究Ⅱ」の時間に、各教室で行われた皆さんの発表を、できる限り参観させてもらいました。もちろん、同時に行われているものを、全て見ることはできませんでしたが、今日発表をした代表者以外の一人一人が、しっかりと準備をし、大変立派な発表をしているのを見ることができました。今日、発表してくれた、代表者の皆さんに対してはもちろん、これまで、「産業社会と人間」、「総合探究Ⅰ」、「総合探究Ⅱ」にまじめに取り組み、地道に自分の能力を伸ばしてきた3年次生、全ての皆さんに、拍手を送りたいと思います。

続いて、1・2年次生の、代表者による発表への感想を、述べたいと思います。審査のために、聞けなかった発表については、事前にいただいた原稿を、読ませていただきました。

まず、「産業社会と人間」で、ライフプランを発表してくれた、1年次生、2名の皆さん。二人が、それぞれの夢に向かって、しっかりとしたライフプランを立て、その実現に、強い意志を持って取り組んでいることが伝わってくる内容でした。以前にもお話ししましたが、何も行動しないまま、 学力面や経済面から、自分の夢に限界を設け、あきらめてしまうのは、もったいないと思います。夢に向かう道は、先が見えないという意味で、迷路と似ていますが、迷路も、その場に立ち止まったままでは、選んだ道が正しいのか、それとも行き止まりなのかは分かりません。自分の夢に向かって、まずは一歩、踏み出し、行動してほしいと思います。

次に、「総合探究Ⅰ」で、ディベートの発表をしてくれた、2年次生、3名の皆さん。皆さんが、今の日本社会に関心を持ち、その課題を、自らの問題として取り組んでいることが、伝わってくる内容でした。私は、皆さんが取り組んでいるディベートが、皆さんが生きていく上で、とても大切な、訓練の場になると考えています。ディベートで勝とうと思えば、意見に説得力を持たせるための、根拠が必要です。物事を、うわさや印象だけで判断せず、それが真実なのか、その根拠を確かめるというのは、皆さんが 生きていく上で、大切な姿勢です。また、ディベートで勝とうと思えば、相手の立論や反対尋問を、予想することが必要になってきます。これは、相手の立場に立って物事を考え、その価値観を尊重することにつながります。そして、自分の考え方を見直して、相手の意見や 批判に耐えることができる、よりよいものに改善していくことができるようになるのです。このような意義を持つディベートに、皆さん、これからも積極的に取り組んでほしいと思います。

最後になりましたが、発表会の運営や進行に協力してくれた、生徒の皆さん、先生方に、心からお礼を述べ、講評とします。

介護福祉士国家試験受験生への激励

2025年3月4日 10時20分
校長室より

介護福祉士国家試験受験生への激励として、次のようなお話をさせていただきました。

皆さん、こんにちは。皆さんが、今週末の日曜日、介護福祉士国家試験を受験されると聞きましたので、一言、応援の挨拶をさせてもらいます。

皆さんは、福祉系列を選択して以降、長い間、勉強と実習に励んできました。特に試験が迫ってからは、8限目までの授業、土日祝日も登校して勉強、お正月も4日から補習に参加するなど、最大限の努力を、積み重ねてきたことと思います。

これまでの努力を信じ、自信を持って、その上で、取りこぼしがないよう、試験の直前まで勉強を続けてください。

私も、おととい、金子先生からお話を聞いて今日の挨拶をさせてもらうことになった時に、その試験がどのようなものか、過去問を見てみました。問題は5者択一で、125問あり、午前中に100分、午後に120分かけて解答すると知って、大変な試験であることが分かりました。

そして、その問題を見て、確かに、法律の内容や、専門用語、正しい手順や数値など、介護の知識や技術を問う問題が多いのは当然ですが、介護を必要とする方に接する際の、態度や姿勢、声掛けや質問の仕方、家族への配慮など、介護に携わる者としての、心がまえや思いやり、といった、人間性や適性を問われる問題も、多く出題されているなと感じました。

これまで、多くの施設等で実習を積んできた皆さんは、知識や技術はもちろんのこと、何よりも大切な、介護を必要とする方へ接する際の心がまえや思いやりを身に付けています。試験当日は、緊張するかもしれませんが、そのような時にこそ、これまで、実習を通して学び、身に付けてきたことを思い出し、自信を持って、落ち着いて、最後まで頑張ってください。

介護福祉士は、高齢社会において、ますます重要な役割を担っていく職業です。皆さんが介護福祉士試験に合格し、多くの人々の生活を支え、豊かなものにしていってくれる人材となることを期待して、激励の挨拶とします。

第3学期始業式

2025年3月4日 10時12分
校長室より

第3学期始業式の校長式辞として、次のようなお話をさせていただきました。

皆さん、おはようございます。令和7年がスタートして、はや1週間以上が過ぎました。

私は、2学期の終業式で、能登半島地震の話をして、冬休み中に、南海トラフ地震への備えについて、保護者の方たちと話し合ってみてください、とお願いしました。

冬休み中には、能登半島の現状を伝える番組が放送されたり、能登半島の過疎問題に関連して紹介した「スキップとローファー」のアニメが、ちょうど先日の日曜から、NHKのEテレで放送され始めたりしましたので、皆さん、私の話を思い出してくれたかな、などと考えていましたが、どうだったでしょう。

実際に、話し合ったり、災害に対して、何か備えを充実させたりすることができたでしょうか。

そういう私は、発電機用のカセットボンベを、追加で買ったり、それらをしまうベランダストッカーを買ったりして、少しは備えが進みましたが、地震は、明日、起こるかもしれないのに、1週間先のお正月の特売で買おう、などと考えて購入したりするなど、やはり、いくら確率が高いとはいえ、いつ起こるか分からないものに備える、というのは、難しいことだなと感じています。

では、いつ起こるか、はっきりと分かっているものについてはどうでしょうか。

皆さんにとって身近なところでいうと、例えば、年度末考査がありますし、3年次生は、それに加えて入学試験や資格試験、そして卒業式、引っ越しなど、いつあるのか分かっているものが数多くあります。

今日から始まる3学期は、とても短いですが、1・2年次生にとっては年次のまとめ、3年次生にとっては、高校生活の「総まとめ」の期間です。そして同時に、1・2年次生にとっては次の年次の、3年次生にとっては新生活の準備期間でもあります。

この短く、そして大切な3学期に、やるべきことは何なのか、まずはしっかりと把握し、優先順位を付け、目標を設定して、計画的に取り組んでください。

そして、その計画を立てる際、これまでよりも、少しだけ、高い目標を設定し、挑戦してみましょう。挑戦といっても、特別なことでなくて構いません。部活動で新しいトレーニングを取り入れてみたり、苦手科目の勉強方法を先生に聞いてみたり、友達や保護者に話しかける回数を増やしてみたり、と、これらも立派な挑戦です。失敗してもかまいません。その失敗は、次の挑戦に生かされます。

学校は、皆さんにとって、様々なことに挑戦できる場所であり、何度でも失敗できる場所です。先生方は、皆さんの挑戦を応援し、失敗したときには支え、一人一人の才能を引き出し、伸ばすため、全力でサポートしていきます。

皆さんにとって、3学期が充実したものとなり、また、そのために、私たち教職員が役立てることを願って、式辞とします。

第2学期終業式

2025年3月4日 10時07分
校長室より

第2学期終業式の校長式辞として、次のようなお話をさせていただきました。

改めまして、おはようございます。今日は、2学期の終業式です。令和6年も、あと10日ほどになりました。

先日、今年の漢字が発表されましたが、皆さん、何が選ばれたか、知っていますか?

1位に選ばれたのは、「金(きん、かね)」でした。皆さんは、どのような感想を持ったでしょうか。

私が、選ぶとすれば、「金(きん)」よりも、2位に入った、災害の「災」、4位に入った、地震の「震」の方を選ぶかな、というのが、個人的な感想です。振り返ると、令和6年は、波乱のスタートでした。能登半島で、震度7という大きな地震があり、それが、1月1日という、家族や親戚が、そろって祝う、お正月に起きた、というのは、衝撃でした。

また、地震そのものもですが、その後の復興がとても遅く、9月には豪雨もあり、そして今、大雪の季節が迫っているのに、避難所で暮らす人たちが大勢いる、といったニュースを聞くと、被災者の方たちの生活が、とても心配になってきます。

ところで、皆さんは、「スキップとローファー」というマンガを読んだことは、ありますか。

先生たち用の月刊誌のようなものがあり、その中に、今、先生たちに勧めるマンガ、というようなコーナーがあって、私もそれをきっかけに、少し読んでみたのですが、ストーリーは、能登半島の先端の小さな町から、将来、東大を出て官僚となり、地方の過疎問題に取り組みたい、という目標を持って、東京の高校に進学した主人公と、周囲の友人たちとの交流を描いたものとなっています。

今回の能登半島の災害が、このストーリーに、影響を与えているのか、これから与えていくのか、途中までしか読んでいない私は知りませんが、愛媛の南予地方という、同じ過疎の問題を抱える地域に住む一人として、過疎地域で災害にあう、ということへの不安や心配は、他人事ではないなと感じています。

実際に、この南予でも、4月には震度6弱の地震がありましたし、8月には宮崎県沖で大きな地震があり、南海トラフ地震、発生の可能性が、高まっている、とする、臨時情報が発表されました。南海トラフ地震が10年以内に発生する確率は約30%、30年以内だと70~80%、50年以内では90%かそれ以上とされていて、被害予測は、東日本大震災の約10倍ともいわれています。

皆さんは、防災のために何か備えているでしょうか。私は、今年、カセットガスが燃料の発電機と、水で膨らむ土嚢を買いました。幸い、まだ使う機会はないですが、いざというときに慌てないよう、冬休み中に、試しに使ってみようかなと思っています。

皆さんも、この冬休み、保護者の方と、家の中の危険個所のチェック、避難場所や連絡方法の確認など、防災について考え、話し合ってみましょう。

皆さんが、楽しいお正月を過ごし、3学期に、また元気に登校してくれるようお願いして、式辞とします。