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修学旅行結団式

2025年10月3日 15時22分
校長室より

修学旅行結団式で、2年次生の皆さんに、次のような話をさせていただきました。

皆さん、いよいよ修学旅行が、近づいてきました。
「集団行動を、ともにする友達への思いやり」「時間やルールを守ることの大切さ」「保護者の方への、感謝の気持ち」等については、これまでにも、お話があったと思います。とても大切なことですので、しっかり心にとめて行動してください。

今日は、私の方からは、これ以外で、いくつかお願いをさせてもらおうと思います。

皆さん、修学旅行では、それぞれ、これを見よう、あれをしようと、楽しみにしていることがあると思いますが、旅行中、そこから少し、視野を広げて、いろいろなものを、見て、聞いてきてください。

例えば、まず、言葉です。東京では町中どこでも、北海道では、観光地で話されている言葉を聞くと、日本語よりも外国語の方が多いくらい、コンビニや飲食店の店員さんの、ほとんどと言っていいくらい、多くの人が、外国人の方です。こういう所にいれば、自然と、外国語を話すことは大切だなと思い始めるでしょうし、勉強や運動は苦手だけど、外国語さえ身に付けたら、自分も社会で活躍できる、自分を生かせる、という気持ちも、わいてくるかもしれません。
また、仕事や会社についても、愛媛では見ないような、いろいろな仕事や会社が並んでいて、ああ、こういう将来、進路もあるんだなあ、と気付くことができるかもしれません。

など、見て、聞いてきてほしいものはいろいろありますが、私が特に見てきてほしいのは、「人」です。
東京や札幌などの都会、特に東京では、いろいろな人が、自分の好きな髪形や服装で街を歩いたり、趣味やゲームを楽しんだり、あるいは、ひたすら何もしていなかったり、しています。それぞれが、それぞれの生き方をしていいのだな、ということが、とても分かりやすく、目で見て、感じられると思います。
世界は、今、皆さんが思っているよりも、ずっと広く、自由です。

皆さんは、これから進路を決めたり、いったん決めた進路を変更したり、さらには人間関係や生き方で悩んだりすることがあると思いますが、その時に、「こうでなくてはいけない」という、一つの考え方に追い込まれ過ぎず、力を抜いて 考えるということは、とても大切な心の持ち方です。 

今、悩んでいることもあるかもしれませんが、いろいろな人を見ることで、皆さんの「心の弾力」のようなものが、少し、強くなってくれればいいなと思っていますし、期待しています。以上です。

生徒会役員・家庭クラブ役員任命式

2025年10月3日 15時17分
校長室より

新しい生徒会役員と家庭クラブ役員の任命式で、次のような話をさせていただきました。

皆さん、おはようございます。
ただいま、生徒会、家庭クラブの新役員の任命を行いました。今日は、新役員の任命式ですが、まずは、この1年、全力で活動してくれた、現役員の皆さんに感謝したいと思います。その前の役員から、大きな責任を引き継ぎ、最初は戸惑いもあったと思いますが、経験を重ねるごとに自信を付け成長していく姿を、とても頼もしく感じていました。ありがとうございました。

そして、新役員の皆さん。本校の生徒会、家庭クラブは、70年以上の歴史があります。新役員の皆さんの先輩に当たる、その時代、時代の生徒会、家庭クラブ役員の皆さんが、この川高を、より良い学校にしようと頑張ってきたのです。新役員の皆さんは、先輩方の伝統を引き継ぎながら、自分たちならではの活動に取り組んでください。

特に、市内3校の統合という大きな節目を迎える時期に役員となった皆さんにとっては、やりがいもありますが、大変なことも多いと思います。全校生徒の皆さんは、新役員の皆さんを応援し、支えてほしいと思います。
本校の生徒会、家庭クラブの活動が、新しいリーダーの下、生徒全員で取り組む、より素晴らしい活動として引き継がれていくことを期待し挨拶とします。

生徒総会・家庭クラブ総会(新役員選挙)

2025年9月17日 08時46分
校長室より

生徒総会と家庭クラブ総会(新役員選挙)の開会挨拶として、次のような話をさせていただきました。

皆さん、こんにちは。これから、生徒総会と、家庭クラブ総会が行われます。

生徒会と家庭クラブは、どちらも、生徒の皆さん自身が、皆さん自身で、学校生活を、より良いものにしていくための組織であり活動です。

そして、そのリーダーとして、様々な活動や学校行事を、自主的・積極的に企画し、運営してくれているのが、生徒会役員と家庭クラブ役員の皆さんです。全体のために、自分の大切な時間や労力を惜しまず取り組んでくれている役員の皆さんの姿に、日々、感心し感謝しています。ありがとうございます。

本日、この後に行われるそれぞれの総会では、新しい役員を決める投票が行われます。特に、新しく、次の役員となる皆さんは、校内の活動だけでなく、市内3校の統合を控え、その準備のための、校外での話し合いや、3校で協力して行う学校行事の計画などに、川之石高校の代表として参加してもらう機会も、これまで以上に多くなると思います。

川之石高校の代表となる、自分たちのリーダーを決める選挙として、皆さん、真剣に、臨んでください。

生徒会と家庭クラブの活動が、川之石高校生一人一人が、自分たち自身の学校を、自分たち自身でよりよくしていくための活動として、さらに充実していくことを期待して、挨拶とします。

就職試験激励会

2025年9月17日 08時42分
校長室より

就職試験を受ける生徒の皆さんに、次のような話をさせていただきました。

皆さん、こんにちは。体育祭も終わり、いよいよ就職試験も本番です。

就職試験は、皆さんにとって、大きなハードルでもありますが、同時に、それを超えれば皆さんの未来を大きく広げる扉でもあります。

不安を感じている人もいるかもしれませんが、皆さんは、これまでの川高での生活の中で、多くの力を身に付けています。

例えば、皆さんは、廊下ですれ違うたびに先生や外部の人に挨拶すること、掃除を時間いっぱい一生懸命行うこと、などを、当たり前だと思っているかもしれませんが、これは、誰でもできることではありません。

これらのことを、自然と行えるのは、皆さんの長所であり強みです。そして、そのような皆さんの良さは、就職試験を担当する方たちに、必ず伝わります。自信を持って、就職試験に臨み、自分の力を出し切ってきてください。応援しています。

体育祭

2025年9月17日 08時31分
校長室より

体育祭の開会式と閉会式で、次のような挨拶をさせていただきました。

【開会式】

皆さん、おはようございます。

本日は、川之石高校、令和7年度体育祭を、御来賓の方々、保護者の方々、地域の方々の御観覧の下、盛大に開催できますことを、心から嬉しく、また、ありがたく感じています。

さて、今年の体育祭は、川之石高校が、単独で、このグラウンドで、1・2・3年次生がそろって、行うことができる、本校の長い歴史の中でも、   大きな節目となる体育祭です。

そして、その本校の、長い歴史の「象徴」となっているのが、玄関前のヒマラヤ杉です。あそこに見えるヒマラヤ杉は、昭和3年、今から100年近く前に、植えられました。植えられた時は、樹齢14年ほど、高さ2mほどであったそうです。それからヒマラヤ杉は、この川之石高校で、川高生とともに、大きく成長してきました。

体育祭についていうと、第1回の体育祭が昭和16年に開かれていますので、ヒマラヤ杉は、体育祭で、走り、笑い、時には涙する川高生を、80年以上、80回以上、見守り続けてきた、ということになります。

そのように考えると、この川高グラウンドで、ヒマラヤ杉の下、行われる今年の体育祭が、本当に貴重で、大切なものだと、改めて感じられます。

皆さんも、今日の一日を大切にして、川高の仲間たちと、全力で、精一杯、楽しんでください。

皆さんにとって、今年の体育祭が、思い出に残る、素晴らしいものとなるよう期待して、挨拶とします。

【閉会式】

皆さん、素晴らしい体育祭でした。

私は、開会式で、ヒマラヤ杉の下、全力で、精一杯、楽しんでください、とお願いしました。

本日の体育祭を見て、このお願いは、十二分に 達成されたと感じています。心から拍手を送りたいと思います。

準備期間から今日まで、体育祭という一つの目標に向かって、みんなが一致団結して頑張った、という貴重な 経験の中で、感じたことや学んだことを、明日からの学校生活に生かしてください。

最後になりますが、本日、生徒たちを、温かく見守っていただいた、御来賓、保護者、地域の方々に、心から感謝申し上げ、閉会の挨拶といたします。

本日は、ありがとうございました。

第2学期始業式

2025年9月17日 08時17分
校長室より

2学期始業式の校長式辞として、次のような話をさせていただきました。

皆さん、おはようございます。今日から2学期です。

休み前には、とても長く感じていた夏休みも、部活動や補習、家庭の行事などで忙しく、あっという間に終わってしまった、と感じている生徒の皆さんも多いのではないでしょうか。

夏休みが忙しいのは先生方も同様で、夏休み中には、皆さんのために役立てられるよう、最新の知識や授業の方法などについて、先生方が勉強するための研修や会議などが多く開催されます。

私も、そのうちのいくつかに参加させてもらいましたが、今日は、その中で聞かせてもらったお話のうち、皆さんにも聞いてほしいと思ったものを、少し紹介したいと思います。

まず一つは、中四国の農業の先生方が集まる会議で、岡山の先生から聞いた、「人生は3万日。有限だ。」というお話です。計算すると、82歳で3万日、16歳と半年で6千日になります。皆さんは、3万日のうちの6千日を生きたことになります。

岡山の先生は、「限られた時間だからこそ、最高のものを追い求めてほしい。」と述べられていました。

二つ目は、全国の福祉の先生方が集まる会議で、ジャパハリネットというバンドのギタリストで理学療法士の中田衛樹(なかた ひろき)さんから聞いた、「やる前からあきらめず、チャレンジしてほしい。」というお話です。無理だと思っても、まずはやってみる。失敗することで、目標との差が明確になり、成功のために何をすべきか分かるから、とのことでした。

ちなみに、この福祉の全国大会は、本校の福祉の先生方が事務局となって開催しました。北海道から沖縄まで、福祉の先生など約250人、文科省など国レベルの来賓の受入れ。会場となる県民文化会館やホテルの借り上げ。スポンサー企業の広告集め、などの準備を、この川高の福祉の先生方が、他教科の先生方と力を合わせて成功させたのは、大変なチャレンジであり素晴らしいことです。皆さんにも紹介しておきます。

最後に、本校の同窓会で、参加者の女性の方から聞いた、「玄関前のヒマラヤ杉は、私の母たちが植えました。」というお話です。本校のヒマラヤ杉が、本校の教員であった方の農園から移して植えられた、ということは、川高の歴史をまとめた記念誌を読み知っていましたが、実際に、その娘さんと会うことができ、知識としてだけでなく、本校の歴史を肌で実感することができました。

皆さんにも、この歴史ある、川高の生徒としての誇りを持って、学校生活を送ってほしいと思います。

以上、まとまりのない話になりましたが、皆さんの2学期が充実したものとなり、また、そのために、私たち教職員が役立てるよう期待して、式辞とします。

第1学期終業式

2025年7月18日 10時50分
校長室より

第1学期終業式の式辞として、次のような話をさせていただきました。

改めまして、おはようございます。今日は7月18日、第1学期の終業式です。そして、明後日の7月20日には、参議院議員総選挙が行われます。選挙権は、18歳の誕生日を、選挙日の翌日までに迎える人が有する、とされていますので、7月21日までに誕生日を迎える本校生、15名が、国政選挙で、初めての投票をすることになります。

ところで、選挙があると、そのたびに、「大事な選挙です。必ず投票に行きましょう」というようなCMが流れるので、権利であるはずの投票を、まるで義務であるかのように感じている人がいるかもしれません。また、これとは少し違いますが、義務教育、という言葉についても、誤解している人がいるということを、聞いたことがあります。義務教育の義務は、保護者が、子供に、教育を受けさせる義務です。子供が、持っているのは、教育を受ける権利です。

選挙権も教育を受ける権利も、自分が自分らしく生き、自分の夢を、誰にも邪魔されることなく実現するために、なくてはならない権利です。どちらの権利も、多くの先人たちが、市民革命など、長い歴史の中で、命を懸けて勝ち取ってきた、大切な権利である、ということを、この参議院議員選挙を機会に、もう一度、考えてほしいと思います。

ところで、皆さんは、時効という言葉は知っていますか?よく、知られているのは刑事時効と民事時効で、刑事時効は、犯罪が起きてから一定期間が経過すると、その犯罪を追及できなくなることを言い、民事時効は、貸したお金や物の請求が、できなくなることを言います。皆さんも、昔の恥ずかしい話や、友達への借りについて、「もう時効」などと使ったことがあるかもしれません。

では、なぜ、時効というものがあるのでしょうか。いろいろな説明がありますが、その一つに、「権利を大切にせず、放っておくような者は、保護しない」、という考え方があります。権利があることを当たり前と思い、それを守るための努力を怠れば、その権利は失われても仕方がない、 というのが、法律の考え方なのです。選挙権や教育を受ける権利についていうと、例えば、投票所や学校の数・場所が変わると、そこに行くための時間や費用も変わります。そのことに無関心でいると、投票や勉強が、しにくくなってしまうかもしれません。

そしてこの、今、あるものを当たり前と思い、それを守ることを怠ると、それを失っても仕方がないという考え方は、権利に限らず、人との関係などについても言えるのではないでしょうか。友人や保護者、先生といった、皆さんのことを、大切に思ってくれている人の存在を、当たり前に思い、その関係を守る努力をしなければ、その大切な関係は、失われてしまうかもしれません。

今回の参議院選挙を、自分の周りにある大切なものに気付き、それを守る努力を始める、きっかけとしてもらえるようお願いし、終業式の式辞とします。

進路の手引き「巻頭言」

2025年7月18日 10時34分
校長室より

進路の手引きの「巻頭言」に、進路指導について、次のような文章を掲載させていただきました。

私が、これまでの教員生活の中で、教科指導と同じくらい力を入れたと思っているのが進路指導です。20代の頃には、HR担任として、ベテランの教員に教えていただきながら、若い教員同士で話し合い、時には競い合うように、クラス生徒の進路指導に取り組みました。30代半ばに校内の進路(進学)の責任者を任された際には、それまでに学んできた進路指導のノウハウを、HR担任や教科担任と共有し、学校全体としての進路指導体制や教員の意識の改革を図ろうと努力しました。

HR担任として自クラスの、そして進路責任者として学校全体の、進路指導の充実に取り組んだ経験から感じているのは、進路指導には、その生徒一人一人に関わる教員の協力が不可欠であり、一人の生徒のために関係教員が総力をあげて取り組まなければ、生徒の高い進路目標の達成を支援することは難しいということです。

また、それと同時に感じていることとして、そのような支援を受けて目標を達成する生徒は、周囲の教員に、この生徒のために自分ができることは全てやってやろう、と思わせるような、明確な進路目標、目標達成への強い意志、そして支援してくれる周囲への感謝の気持ち、などを持っていたということです。

生徒の皆さんも、これから、勉強や部活動をがんばり、進路実現に必要な力を身に付けていくことと思いますが、一人でできることには限りがあります。保護者の方や先生方から支援していただきながら、そしてそのためには支援を得られるような真摯な姿勢で、目標達成のため努力を重ねてほしいと思います。

以下、進路について私が思うことを書いてみます。箇条書きにするので、気になる部分だけでも読んでいただければと思います。私が川之石高校の校長となり、この進路の手引きの「巻頭言」を書くのも、もう3回目となりましたので、昨年、一昨年と重なることは省いています。特に大事なことは、先に書いていますので、過去のものも読んでもらえれば幸いです。(本校HP『校長室より』に掲載されています。)

○「過去の成功体験に基づく進路指導の危うさ」

自戒を込めて書くと、この巻頭言の前半で書いた「進路指導」とは、いわゆる「出口指導」と批判的に呼ばれるものに近いかと思います。出口指導とは、入学試験や就職試験に合格させるための指導に終始することを意味します。生徒が将来の夢を実現するために希望し、教員としてもそれが適当だと判断した大学や企業に合格させるための指導を行うことは、決して悪いことだとは思いません。

しかし今、社会は大きく変わり、予測不可能な時代と呼ばれています。この大学・企業に進めば将来はこうなるだろう、と予測できていた時代から、どのような進路を選んでも、その将来は確実とは言えない時代となったのです。教員は、それまでの自分自身、あるいは過去に関わった生徒たちの成功体験に基づいて進路指導を行うことの危うさを自覚した上で、指導に臨まなくてはならないと感じています。

○「予測不可能な時代の進路指導とは、卒業後も必要とされる力を身に付けさせるもの」

これまでの日本では、多くの企業が終身雇用制を採用していました。しかし今、転職者は全世代で大きく増加しており、この5年間に、全世代平均で約2.5倍、特に50代では約5.3倍となっています。転職により賃金が増える割合も高まっており、解雇されたというような消極的な転職ではなく、よりよい労働環境、自分の能力を発揮できる職場を求めてというような積極的な転職が増えているのです。

そうなると、進路を決める力は、高校卒業時に大学・企業を選ぶときのみに必要なものではなく、生涯にわたって必要な力となってきます。つまり、高校卒業後も、自分で進路を選び実現できる力を身に付けさせることが、今の時代に求められる進路指導であると言われるようになったのです。生徒の皆さんは、卒業後も、自分で進路を調べ、選び、決定し続けられるような力を身に付けておく必要があるのだということを意識しながら、進路指導に関するHR活動や行事に参加してほしいと思います。

○「努力の成果は階段状に現れる」

 生徒の皆さんは、これから、進路実現につながる勉強や部活動に取り組んでいくことと思いますが、その成果は、努力と比例しては現れません。成果は、階段状に現れます。努力しても努力しても成果が現れない時期を我慢し粘り強く努力を続ければ、ポンッと成果が現れます。そしてそのように成果が上がれば、高い山に登ったのと一緒で、見える風景(目指せる進路目標)が変わってきます。まずは山に登ってみましょう。

『校長室より』の中の『R6進路の手引き』、「決まれば対策を講じることができる、けど、決まっていなくても大丈夫」に続きます。読んでみてください。

PTAだより第58号「ひまらや杉」

2025年7月18日 10時29分
校長室より

PTAだより第58号「ひまらや杉」に、「『ポンペイ』と『論破』」と題して、次のような文章を掲載させていただきました。

先日、世界遺産の『ポンペイ』を紹介するテレビ番組を見ていて、感心したことがありました。ポンペイは古代ローマの都市で、今から約2000年前に近くの火山が噴火し、火山灰の下に埋もれ滅びてしまいました。18世紀に発掘が始まると、火山灰が劣化を防いだことにより、当時のままの街並みや壁画、美術品などが姿を現わしました。逃げ遅れた人々が埋まった跡に石膏を流し込み再現した人々の姿は、皆さんも見たことがあると思います。

私が、感心したのはここからで、ポンペイ遺跡は、現在までに、全体の約7割が発掘されていますが、残りの3割は意図的に発掘せず、埋もれたままにしているそうです。これは、「将来、技術や知識が進歩した時代に発掘した方が、より詳細な調査ができ、よりよい状態で保存できるようになるだろう」という、未来の進歩を信じた方針であるとのことでした。

「自分の技術や知識は完全ではない」「自分が信じている理論が正しいとは限らない」という自覚や戒めを研究者が有し、それが全体の方針とされていることに、驚き、大袈裟ですが、人間というものの英知を感じました。

私が、特にそのように感じたのは、今、世界で、自分や自分の意見を絶対的に正しいものとし、立場や意見の異なる相手を徹底的に攻撃し否定するという風潮が広がっていると感じているからです。日本でも、短い言葉で相手を言い負かすことを、勝ちでありかっこいいとする傾向がSNS等を中心に見られ、このことを象徴する『論破』のブームは、子供たちの世界にも広がっています。「はい、論破」とともに使われる「それってあなたの感想ですよね」という言葉は、「小学生流行語ランキング」で2022年に1位、23年にも4位に入っているとのことです。

自分の意見を持ち、それを正しいと自信を持って主張すること、そしてその技術は、とても大切なことだと思います。ただ、立場や意見の異なる相手を否定し、自分が正しいと認めさせたとして、その先に何かが生まれるとは思えません。自説の正しさを認めさせ自説を全く変えなかったとすれば、そこには何の進歩もないからです。

今の私たちに必要なのは、「論破」ではなく「議論」ではないでしょうか。物事を〇か×か、100か0かで単純化せず、個別の複雑な事情を寛容に受け止め、立場や意見の異なる相手の意見を忍耐強く聞いた上で自分の意見を述べていく、そして自分の意見を絶対的に正しいものとせず、よりよいものへと昇華させていく。議論には時間も手間もかかりますが、これを避けてしまうと、社会の分断が進み、進歩の機会も失われてしまいます。

『論破』はあくまでゲームにとどめ、皆が『ポンペイ』の謙虚さを持ち議論すること、このことが、今の社会で求められているように感じています。

農業クラブ各種発表校内大会

2025年6月12日 11時58分
校長室より

農業クラブの各種発表校内大会が開催され、成人代表として、次のような挨拶をさせていただきました。

皆さん、こんにちは。私は、日頃の皆さんの、農業に関する、各種の大会やコンクールなどでの活躍を、先生方からの報告や、新聞やテレビの報道から知ることができていますが、実際に、この目で、見られる機会は、あまり、ありません。そのような中、本日は、皆さんの日頃の取組や思いを、直接、見聞きすることができるということで、大変、楽しみにしています。

ところで、私は宇和町に住んでいるのですが、今年は、米の価格が高騰していることもあってか、昔、田んぼで、最近は畑になっていたところに、久しぶりに水が張られ、田植えが行われています。朝日や夕日を反射し、一面が 輝く風景は、懐かしく、とてもきれいです。田んぼは、米を作るという役割だけでなく、水をためるダムの役割、土壌の流出、塩害を防ぐ役割、などを果たしているというのは、よく言われることです。

そして今回、皆さんに、挨拶をすることになったので、田んぼは、温度上昇も抑えてくれているのではないかな、確認してみよう、と思い、ネットで調べてみたのですが、全然知らなかった事実が書かれていて、驚きました。田んぼからは、温暖化の原因となるメタンガスが発生しており、大きな問題となっている、とのことでした。

農業は、人類の、持続可能な社会に欠かせない産業ですが、その実現に向け、解決し乗り越えていかなければならない課題が、まだまだ残されているのだな、と改めて感じました。今日の皆さんの発表は、そのような課題に直結するものではないかもしれませんが、農業に対して関心を持ち、自分の身近なところの課題に気付いて、その解決に取り組もうとする意欲を持ち続けることは、とても大切なことだと思います。

そのような皆さんの姿勢が、今後の農業の課題の解決と、さらなる発展につながることを期待しています。自信をもって堂々と発表してください。最後になりましたが、この発表大会に向けて、準備をしてくれた生徒の皆さんや先生方に感謝の意を表して、挨拶とさせていただきます。