夏休みを迎えるに当たり、本校の進路課から生徒たちに、令和4年度『進路の手引き』を配布しました。その巻頭言に「夏は熱く」と題した、下のようなメッセージを書きました。
生徒の皆さん、新型コロナウイルス感染症や熱中症などに十分気を付けながら、充実した夏休みにしてください。
3年次生にとって今年の夏は、自分の進路を決定する上で、とても重要な時期です。1年次生と2年次生にとっても、進路について考えたり、その実現に向けて準備をしたりする時間が十分にとれる夏休みは、とても大切な期間です。皆さんは、そのような「夏」に、何をどのように取り組みますか。私が働き始めたころに経験したことを参考にしてもらいながら、将来、社会に出て働くこととなる自分の姿を想像したり、自分の進路希望や夢を実現させるための夏の過ごし方について考えたりしてほしいと思います。
私は県立高校の教員(社会科)に採用されたものの、最初の職場は学校ではなく、県内の遺跡を発掘する調査センターでした。考古学を専門的には学んだことがなく、他の職員に、遺跡を識別するための土の色の見分け方から教わりました。1年目は、約2千年前の弥生時代の集落跡を、私を含む5名の職員と15名の作業員とで調査しながら仕事を覚えました。
次の年は、いくつかの調査地を任され、初めて主担当となったのは、標高約140mの山頂近くにあった遺跡でした。7月初め、私と臨時職員、作業員3名の計5名で発掘を行い、当初は10日程で調査を終える予定でした。しかし、予測を超える量の遺物が出土して、結局、調査は2か月間に及びました。
主担当者には、関係者と調整しながら調査の進み具合に応じて作業の日程や方法を決め、作業員の勤務や健康を管理し、必要な道具や機械を調達するなど、様々な業務がありました。山のふもとから調査地までは、人一人が歩ける程の狭い急な山道で、自動車はもちろん小型重機も通れなかったので発掘はすべて手作業となり、出土遺物も多いので作業員を増やしました。また、調査期間が延びる中、事務や休憩用のプレハブ小屋を建てることも、電気や水道、電話を引くこともできず、雨や強い日差しを避けるためのテント二張りを、みんなで一緒に担ぎ上げました。
その年の夏は、例年にない猛暑日続きで、毎朝、カメラ機材の入ったケースを背負い、全員で使う手洗い用水を入れたポリ容器を両手に持って山道を登るのが、私の仕事の始まりでした。そして、携帯電話などがなかった時代でしたので、昼休みに山を降りて、公衆電話から、本部に連絡をしたり、関係者や業者と打ち合わせをしたりしました。発掘状況によって必要なことやものは変わり、それに応じて仕事の段取りは違ってきます。現場責任者である以上、経験の浅さは言い訳にはなりません。不便な環境下であることを踏まえ、状況の変化を見て今後を予測し、対応を決断して行動に移す。これを、失敗しながら無我夢中で繰り返した、長くもあり短くもあった、暑い夏の熱い日々でした。
教員4年目に南予の小規模校へ異動し、初めて高校生と向き合いました。3年生のクラス担任となり、日本史を教えましたが、時間割の都合上、大学受験に対応させるためにはどうしても授業時間が足りません。そこで、生徒の希望を確認し保護者の承諾を得た上で、男子生徒7人に夏休み返上で臨時補習を行いました。その中の一人は、クラスの卒業文集に3年間の思い出として、その臨時補習を挙げていました。彼らと私にとって熱い夏でした。
昨年度(令和3年度)の『進路の手引き』の巻頭言でも少し紹介しましが、目標を達成するための方法に、「フォアキャスティング」と「バックキャスティング」という二つの方法があります。フォアキャスティングは、「今」を出発点として、その時々の状況の中で実現可能と考えられることを積み上げながら、未来の目標を目指す方法です。教員となって最初の3年間の調査センター勤務では、主にこの方法で仕事を進めました。一方、バックキャスティングは、「未来」のある時点に目標を設定しておき、そこから振り返って現在すべきことを考える方法です。教員4年目で赴任した高校で実施した、受験に必要な学習内容を把握し、計画を立てて勉強した夏休みの臨時補習は、この方法で行いました。働き始めたころの夏の日々の経験を、私は今でも心の支えの一つとし、仕事をする上で生かしています。
生徒の皆さんは、進路実現への備えや勉強、部活動などを、フォアキャスティングとバックキャスティングのどちらの方法で取り組み、熱い夏にしますか。
7月20日(水)に第1学期終業式を校内放送にて行い、式辞として次のような話をいたしました。
1学期の終業式に当たり、生徒の皆さんに伝えたいことが二つあります。
一つは、学校外の方から教えていただいた、本校生徒のようすについてです。ある高校の教員から本校の教員に、次のような連絡がありました。先日、その方が、学校行事の一環として自分の学校の生徒たちと一緒に保内町内を見学されていたところ、偶然、本校の生徒たちに出会い、本校生の方から気持ちの良い挨拶をしてくれた、というものでした。わざわざ連絡をくださったということは、当たり前のようにさわやかな挨拶をする本校生の姿が、その方にとって、とても印象深かったのだろうと思います。
私も、皆さんがいつも、大きな声で挨拶やお礼をしているようすにいつも感心しています。そして、その明るく響く声のおかげで前向きな気持ちになれることに感謝しています。「おはようございます」、「こんにちは」、「さようなら」、「ありがとうございます」。挨拶やお礼の言葉をかける皆さんの気持ちは、必ず相手の心に届き、まるで魔法のように、相手の気持ちを柔らかくし、優しくします。挨拶とお礼の声が響き合う川高で、これからもあり続けましょう。
挨拶やお礼は、まず、自分の意識を挨拶やお礼をする相手に向けることから始まります。自分の意識を相手に向ける、すなわち、自分の思いを相手にやる(おくる)。皆さんに伝えたいことの二つ目は、その「思いやり」についてです。人と会い、話し、一緒に活動すること、つまり、人と関わり合うことは、うれしく楽しいことが多い半面、自分の思い通りにならず、我慢をしなくてはならなかったり、辛い思いをしたりすることもあります。しかし、人間は、衣食住のどれ一つをとっても、自分の力だけで解決できるものはなく、いろいろな人と関わり、助け合いながら生活していかなくてはなりません。皆さんは、やがて高校を卒業し、実社会で活動する「社会人」として、生活状況や仕事、立場などが異なる、多くの人と関わります。そのときにとても大切となるのは、人の気持ちや状況などを気にかけ、人の身になって考え、心を配り、優しく接すること、つまり、思いやりの気持ちを持ち、それを行動にあらわすことです。思いやりのある人は素敵でカッコよく、幸せな人だと思います。
先日の体育祭結団式で、英語の「imagine」(イマジン)という言葉を皆さんに伝えました。日本語では、「想像する」と訳されます。思いやりは、相手の気持ちや置かれている状況などを想像することから始まります。元気な挨拶をするときに、そのことを思い浮かべてくれたらとてもうれしいです。
皆さんが、新型コロナウイルス感染症の予防をしっかりと行い、元気で 有意義な夏休みを過ごされることを、心から願っています。そして、2学期の始業式で、皆さん全員と笑顔で再会できることを楽しみにして、あいさつとします。
令和4年7月14日(木)曇り日に、令和4年度第1学期校内球技大会を実施しました。新型コロナウイルス感染症の急拡大により県独自の警戒レベルが一段階引き上げられたことに伴い、開会式及び閉会式を校内放送にて行い、あいさつの中で次のような話をしました。
【開会式】
今年度初めての校内球技大会です。昨日の全校放送でも伝えたように、愛媛県内の新型コロナウイルス感染症の陽性者数が急激に増加し、7月12日に県の警戒レベルが引き上げられました。
そのため、この球技大会も感染防止対策を強め、さまざまなことを急遽変更しながら行います。変更点や注意点はいずれも、皆さんを感染症から守り、学校や家庭で普段どおりに生活できるようにするためのものです。それを十分に理解し、指導や指示を必ず守ってください。
2年次生と3年次生には昨年度の球技大会のあいさつの中で伝えたことを、1年次生にも話しておきたいと思います。ソフトボールやバレーボール、卓球などの球技種目は、チームの仲間と力を合わせ、一緒になって勝負を競う楽しさや喜びを味わうことができます。一般的にはスポーツ大会という名称を使う高校が多い中、本校が「球技大会」の名称を使い続けているのは、「よい仲間づくり」も大切な目的としているからだと思います。
ですから、皆さんには、まず、熱中症の予防を最優先しつつ、3密を避け、試合中を除いてマスクを着用し、手指消毒をしっかりと行うなど、新型コロナウイルス感染症の予防に努め自己管理をするとともに、周りの人に配慮をしてください。そして、けがなどに十分気をつけながら、互いに協力し合い、試合中は対戦相手を敬い、ルールと審判を尊重したプレーをしてください。
さまざまな制限や制約はありますが、皆さんが、常に仲間を思いやり、一緒にスポーツを楽しむことによって有意義な大会となることを期待し、開会のあいさつとします。
【閉会式】
皆さん、お互いに相手を思いやりながら、スポーツを楽しむことができましたか。新型コロナウイルスとの共存・共生を意味する「ウィズコロナ」の時代を生きなくてはならない私たちは、さまざまな活動において、我慢を強いられ、対策や努力、工夫が求められています。そのため、辛く、苦しく、煩わしく感じることも多いです。
しかし、そのような中にあって、私たちみんなが、それぞれの活動において、お互いに相手のことを思いやりながら対策や努力、工夫を誠実に続けていけば、新たな喜びや楽しみが見つかると信じています。
この球技大会も、対策や努力、工夫をしながら実施しました。なぜそういうことをするのかを理解し、行動に移してくれた皆さんを頼もしく思います。そして、大会の中で意識された、周りに配慮しながら楽しむ、そのためには何が大切で何をすべきかを考える、という「心の持ち方」をこれからも大切にしてほしいと願っています。
終わりに、大会の準備や運営に協力してくれた生徒の皆さんに感謝の気持ちを伝えて、閉会のあいさつとします。
7月5日(火)の6時限目終了後、体育館で野球部壮行会を行いました。会の中で、野球部の生徒たちに、次のようなエールをおくりました。
この夏の全国高校野球選手権愛媛大会が、7月7日からいよいよ始まります。野球部の皆さんには、一球一球、戦い抜いてほしいと思います。試合中は、どのような場面でも浮ついた気持ちにならず、落ち着き、互いに声をかけ合い、しっかりとグラウンドを踏みしめ、一投一打に集中してください。
そして、普段の練習で身に付けた、本校伝統の「徹底力」を試合で十分に発揮し、守備からリズムをつくり、全員の力による総攻撃によって勝ち上がっていくことを期待しています。皆さんの活躍を心から応援しています。
7月1日(金)、体育館で行った令和4年度体育祭団結団式のあいさつの中で、生徒たちに次のような話をしました。
今年度の体育祭と川高祭の共通スローガンは、先ほど紹介されたとおり、「輝望(きらり)~無限に光る笑顔と伝統~」です。輝くという漢字と、望みという漢字、その二つを並べて、「きらり」と読みます。皆さんがそれぞれの望みをかなえようと輝き、きらきらした笑顔で競技や発表などに取り組む体育祭と川高祭にしましょう、というメッセージが込められているように思います。そして、そのように全員で取り組むことのできる雰囲気こそが川高の輝かしい伝統である、という意味も込められているのでしょう。とても、すばらしいスローガンです。
これからの準備や練習において、新型コロナウイルス感染症と熱中症の、両方の予防に十分努めながら、3年次生は下級生の見本となり、2年次生は3年次生を助けて1年次生を支え、1年次生は上級生に協力する。その姿を見せ合いながら一生懸命に取り組み、スローガンどおりの、「きらりと光る体育祭」にしましょう。
そこで、皆さんに伝えたい言葉が一つあります。それは、英語の「imagine」(イマジン)という言葉です。日本語では、「想像する」とか「思い描く」と訳されます。厳しい暑さの中、勝利を目指して、教えたり、助けたり、支えたり、協力したりする団員一人ひとりの気持ちや体調を、お互いに想像し、思いやりながら準備や練習を行ってください。そうすれば、当日は、「きらりと光る体育祭」となります。みんなで実現させましょう。それを大いに期待して、あいさつとします。
6月17日(金)の2時限目に、体育館にて、本校農業クラブの各種発表校内大会が実施されました。開会に当たり、成人代表として、農業クラブ員の生徒たちに、次のようなあいさつをしました。
本校の農業クラブ員を代表して、6名の生徒の皆さんが、それぞれ身近な問題や将来の課題を解決するために、どのように考え行動するかについて発表してくれます。どの発表も題名から想像するに、多様性に富み、聴いてみたいという気持ちになります。発表者の皆さんは、どうか自信を持って臨んでください。
一方、発表を聞く生徒の皆さんにもお願いがあります。発表者は時間をかけて準備をされ、勇気を出して皆さんの前に立たれます。発表者に敬意を持ち、しっかりと聞いてください。そして、内容からはもちろんのこと、発表者の取り組み姿勢からも多くのことを学んでほしいと思います。
この「各種発表校内大会」を通じて、生徒全員が、クラブ員の三大目標である、社会性・科学性・指導性を高めるとともに、周りの人のことを思いやる気持ちを豊かにすることも願っています。
終わりに、大会の運営や進行に協力してくれている生徒の皆さんに心からお礼を述べ、あいさつといたします。
6月15日(水)に川之石高校を会場として、愛媛県高等学校教育研究会数学部会の南予支部総会が開かれました。開会行事の中で、会場校を代表して、ご来校いただいた方々に、次のようなあいさつをいたしました。
川之石高等学校へようこそお越しくださいました。皆様を大歓迎いたしますとともに、本校にて授業研究や研究協議をとおしてご指導いただきますことに深く感謝を申し上げます。
さて、正門を入られた際に、校舎の前に美しくそびえたつヒマラヤスギをご覧になられたでしょうか。創立から108年目を迎える伝統ある本校の歴史とともに、生徒たちを見守ってくれている、本校のシンボル・ツリーです。
空に向かって梢を高く伸ばすためには、それを支えるための根を地中深く広げなければなりません。本校では、このヒマラヤスギのように、生徒たちが高い志を持って日々の教育活動に一生懸命取り組み、私たち教職員も、そのような生徒たちの成長を精一杯、支えています。
本会が、皆様にとりまして、教科の専門性をさらに深め広げ、生徒の力をより高く伸ばすための研鑽の場となりましたら、会場校としてこの上ない喜びでございます。本日は、どうかよろしくお願い申し上げます。
5月6日(金)の6時限目、ホームルーム活動の時間に、今年度の第1回生徒総会並びに家庭クラブ総会を校内放送にて行いました。両総会を開始するに当たって、生徒の皆さんに次のようなあいさつをしました。
生徒会と家庭クラブ、それぞれの組織と活動はともに、生徒の皆さんの、皆さんによる、皆さんのための組織であり活動です。このあと、それぞれの総会で、令和3年度の行事や決算についての報告と、令和4年度の行事計画や予算についての審議が行われます。自分自身のための総会なのだ、という意識を持って臨んでください。
また、生徒会の執行部役員及び各種委員会役員の生徒の皆さんと家庭クラブ役員の生徒の皆さんには、これまで様々な活動を自主的・積極的に企画してくださり、本日の総会の開催に当たっても準備や運営をしていただき、心からお礼を申し上げます。
生徒の皆さんに大いなる期待と感謝をお伝えし、二つの総会が実りあるものとなることを願っています。
5月6日(金)の2時限目、本校武道場にて、農業科目を選択している生徒たちでつくられる農業クラブの今年度第1回総会が行われました。成人代表として、クラブ員である生徒たちに、次のようなあいさつをしました。
授業で農業を学んでいる皆さんは、日本学校農業クラブ連盟(FFJ Future Farmers of Japan)の一員です。総会資料の1ページ目にも載っている「FFJの歌」の3番の歌詞に、「香る大地に がっちりと 学と業とを両の手に 伸びる生命の 逞しさ」という言葉があります。「学と業とを両の手に」、すなわち「勉学」と「実践」、その両方に一生懸命取り組む若者が生き生きとたくましく成長する、という意味です。
川之石高校にも、108年前に創立されて以来、「実践」を重んじて「体験」から学び、「人格」を養う、という校風が受け継がれています。
この「川高」で、農業クラブ員として活動している皆さんには、「FFJの歌」と川高の校風を忘れず、充実した学校生活を送り、自分の力を十分に伸ばしてほしいと思います。