11月29日(火)、2学期末定期考査終了後に、体育館にて令和4年度修学旅行結団式を行い、生徒たちに次のような話をしました。
修学旅行の間、皆さんの心の中に持ち続けてほしいものが三つあります。
まず、「感謝」の気持ちです。旅行に行かせてくださる保護者の方や、旅行を実現させようと皆さんを支え、準備をしてきた先生方や旅行業者の方は、生徒の皆さんに対して、安全に気を付けた上で貴重な経験をしてほしいと願ってこられたことを忘れないでください。
次に、「自律」の精神です。自分だけではなく、参加者全員にとっても楽しい学校行事にするためには、一人一人がルールや時間を必ず守り、新型コロナウイルス感染症対策を怠らずに体調管理をしっかりと行うなど、自分自身をコントロールしなければならないことを忘れないでください。
そして、周りの人への「思いやり」です。皆さんは3学期以降、学校内のいろいろな場面で、今以上にリーダーとなったり重要な役割を担ったりします。さらに、1年と数か月に迫った卒業の後は、社会人として様々な集団の中で活躍することとなります。そのようなときにとても大事なのは、相手の気持ちや状況を思いやり、相手の立場に立って考えたり行動したりすることです。修学旅行はそのことを学び実行するチャンスです。それを忘れないでください。
皆さんが元気に出発し、貴重な経験を積み、元気に帰ってくることを楽しみに待っています。
11月3日(木・祝日)、少し汗ばむほどの晴天の中、令和4年度 川高祭を実施しました。どの企画にも生徒たちが一生懸命に取り組んだ様子がうかがえ、楽しくうれしい気持ちになる一日でした。
【開会のあいさつ】
皆さん、おはようございます。いよいよ川高祭が始まります。本日は、保護者の皆様にもお越しいただき誠にありがとうございます。「輝望(きらり)~無限に光る笑顔と伝統~」のテーマのもと、皆様の表情が輝き、笑顔あふれる一日となりますことを願っています。
さて、先日10月31日に松山市の県民文化会館で第70回愛媛県社会福祉大会が開催されました。その中で、長年にわたって地域福祉の推進に貢献した個人や団体が愛媛県知事や愛媛県社会福祉協議会長から表彰されました。そして、本校も、様々な福祉活動やボランティア活動などを通して地域の子どもたちや高齢者の方々をはじめ多くの人たちを助け支えてきた、と高く評価してくださり、県内で唯一の「地域福祉功労賞」を受賞し、このような賞状をいただきました。皆さんに報告して喜びを分かち合いたいと思います。
この川高祭に備えて、生徒の皆さんが部活動や委員会活動、クラブ活動、年次活動で、助け支え合いながら、企画への参加者や来場者に楽しんでもらうための工夫や努力を続けてこられたことを聞いています。その成果が披露されることを待ち遠しく思います。先ほどお伝えした地域福祉功労賞のことと併せ、「相手を思いやりながら助け支え、努力を続ける」という皆さんのすばらしさを、これからも大事にしてください。
終わりに、新型コロナウイルスはまだまだ油断ができません。皆様には、マスクの着用や手指消毒など、これまで同様の感染回避行動をお取りいただきながら、川高祭をお楽しみいただければと思います。どうか、よろしくお願いいたします。
【閉会のあいさつ】
どの企画も、観る人や参加する人に楽しんでいただこうとする工夫や熱意が感じられ、とてもすばらしいものでした。皆さんに拍手を送ります。
今日の新聞にも紹介されていましたが、文化祭の「文化」という言葉は、英語の「culture」の日本語訳です。その「culture」は、ラテン語の「耕す」を意味する言葉からきています。「土地を耕す」という意味で用いられていた言葉が、やがて、「心を耕す」の意味でも使われるようになり、そこから、心を耕す糧となるもの、「文化」を意味するようになったと言われています。
私にとっては、自分の心を耕すことのできた一日でした。皆さんは、どうでしたか。これからも、音楽や美術、書道、パフォーマンス、展示・発表など、様々な「文化」的な活動に親しみながら心を耕し、自分の身の回りにある、楽しいことやうれしいことに気づくことのできる、やわらかな感受性を養ってほしいと思います。
終わりに、川高祭のために準備や運営をしてくださった皆さんに心からお礼を申し上げて、閉会のあいさつといたします。本当にありがとうございました。
9月9日(金)の朝、全校放送にて、生徒の皆さんに新型コロナウイルス感染症対策について、次のような話をいたしました。
皆さんに、コロナ対策について話しをします。
3密(密閉している・密集している・密接している)を避ける、手洗いや手指消毒を行う、熱中症に注意しながらマスクを常に着用する。これらのことに皆さんが気を付けながら学校生活を送っている様子を、いつも見ています。
では、放課後や下校時、休日において、友達と行動をするときにも同じ行動をとっていますか。もし、それができていない人がいれば、学校の中でだけ注意をすればよいと考えていませんか。コロナウイルスはいたるところに存在しています。ですから、学校の中でも外でも同じ行動を心がけましょう。
始業式や体育祭でも話しましたが、とても大切なことなので繰り返し皆さんに伝えます。感染を完全に避けることは難しいことです。しかし、自分や友達が感染したとしても、他の人を濃厚接触者にしない、自分が濃厚接触者とならないようにすることはできます。学校生活においてはもちろん、放課後や登下校、休日などにおいても、外出しているときは、3密を避ける、マスクをする、友人たちと同じテーブルで食事をするときは、マスクを外しているので、大勢にならず黙食をして短時間ですますなど、基本的な対策を地道に守り続けましょう。
皆さんには、それを心がけ、周りの人と自分を守ろうとする深い優しさのある人であってほしいと願っています。
9月3日(土)、曇り空のもとで令和4年度体育祭を実施しました。どの競技や演技にも生徒たちの工夫や努力がみられ、一生懸命な生徒たちの姿が光る、すばらしい体育祭となりました。
【開会式あいさつ】
令和4年度体育祭を保護者の皆様にご観覧いただきながら開催できますことを、とてもうれしく思います。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う制約や制限がある中、生徒たちの様々な工夫や努力と教職員の細やかな配慮や支援によって今日の日を迎えることができたことに対し、感謝の気持ちと誇らしい気持ちとで一杯です。
7月に行った体育祭結団式で生徒の皆さんに話したことは、「厳しい暑さの中、勝利を目指して、教えたり、助けたり、協力したりする団員一人ひとりの気持ちや体調を、お互いに想像し思いやりながら、準備や練習を行ってほしい。そうすれば、『きらりと光る体育祭』となります。」と呼びかけました。
そして、本日。これまで以上に体調管理を丁寧に行い、相手を思いやり協力し合いながら、一生懸命、競技や演技などに取り組んでください。感染予防のために自粛していることはいろいろとありますが、できることに力を精一杯注ぎ、コロナ禍での「光り輝く体育祭」をみんなで実現させましょう。
生徒の皆さんの活躍を期待し、保護者の皆様にご協力をお願いして、開会のあいさつといたします。
【閉会式あいさつ】
どの団の競技、演技ともに、とてもすばらしいものでした。心から拍手をおくります。
さて、生徒の皆さんは、2学期の始業式で私が話したことを思いだしてください。感染症の特性や感染状況の変化に対応するため、学校行事や部活動などにおいて自分や友達を感染から守るためにどのように行動すべきかを、ルールを踏まえながら、自ら考え、判断し、その行いを続けている生徒たちがいる、ということ。そして、その人たちは、主体性や自律性を発揮していて、コロナ禍という逆境の中で大きく成長している、ということを皆さんに伝えました。
今日、どの生徒も、自分の役割を積極的に一生懸命果たし、全員の工夫と努力によって様々な困難を乗り越え、「輝望(きらり)~無限に光る笑顔と伝統~」というスローガンにふさわしい体育祭を成し遂げました。皆さん一人ひとりの活躍を称えるとともに、感謝いたします。準備期間を含め、これまでの活動の中で経験したことや学んだことを、これからの学校生活をはじめ、今後の人生に生かしてください。
終わりに、保護者の皆様には感染症対策にかかわるお願いにご協力いただきながら、生徒たちを温かく見守ってくださり誠にありがとうございました。深くお礼を申し上げ、閉会のあいさつといたします。
8月26日(金)、第2学期始業式にて、生徒に次のような話をしました。
1学期の終業式で、二つのことを皆さんに伝えました。挨拶やお礼の言葉は、人の気持ちを柔らかくし、優しくするということ、そして、川高をこれからも、挨拶とお礼の声が響き合う学校にしようという話。もう一つは、人の気持ちを想像し、人の身になって考え行動すること、つまり、思いやりの気持ちを持ち、それを行動にあらわそうという話でした。これからも取り組んでいきましょう。
さて、今年の夏、ある方の講演を聴きました。株式会社今治.夢スポーツ代表取締役会長であり、サッカー日本代表監督を務め日本サッカー協会副会長でもある岡田武史さんです。岡田さんは、企業経営者やサッカー指導者として体験したこと、考えたこと、行動したことを語られ、特に、主体性と自律性の大切さを、繰り返し話されました。
主体性とは、自分で目的や目標を設定し、自ら判断・行動することです。一方、自律性は、人からの強制や手助けを受けず、自分が立てたルールによって行動することをいいます。コロナ禍による状況の変化や課題に対応するため、生活の様々な場面で試行錯誤が続いています。皆さんも、授業や行事、部活動などにおいて同様な状況でしょう。そのような中、教員や保護者の方に言われたからという理由だけでなく、自分や友達、チームのためにどのように行動をすべきかを自ら考え、判断し、それを守り続けている人もたくさんいると思います。そのような人たちは、岡田さんの言われた主体性や自律性を発揮しています。コロナ禍という逆境の中で、鍛え磨かれ、大きく成長しているのです。
新型コロナウイルス感染症対策として、三つの密を避ける、マスクを正しく着用する、マスクを外す必要があるときは人との間を空け、近い距離では会話をしないなどがあります。なぜ、それらを守るべきなのか。それは、みんなの普段の生活を守ることにもつながるからです。まだまだ謎が多い感染症の拡大を阻止するために様々なルールが決められています。「自宅待機」という行動制限もその一つです。感染拡大防止のため、学校や仕事場へは行かず、外出を控えるというルールです。感染した人だけでなく、感染している可能性の高い人、すなわち濃厚接触者にも、それぞれの日数の自宅待機が求められています。
感染を完全に避けるのは難しいことです。ただし、自分や友達が感染したとしても、他の人を濃厚接触者にしない、自分が濃厚接触者とならないようにすることはできます。濃厚接触者に当たるかどうかの基準には、マスクをしていなかったかどうか、同じテーブルで食事をしたかどうか、換気の悪い環境で長時間過ごしたかどうか、などがあります。中でも、マスクの着用は重要なポイントとなります。コロナ感染を避け、友達や自分が様々な活動を普段どおり行えるようにするためには、熱中症対策を優先しつつマスクを正しく着用する、外す場合は人との距離をできるだけ取り、話を控えることがとても大事なのです。
これから体育祭を迎え、2学期は、年次ごとに大事な活動や行事がたくさんあります。それらの活動や行事に全員が取り組むことができるようにするためにも、感染症対策において、私たち一人一人が、先に話した自主性と自律性を発揮し、人から言われてではなく、自ら行動しましょう。皆さんに、そのことをお願いし、あいさつとします。
8月1日(月)に、本校で令和4年度 中学生一日体験入学を実施しました。南予を中心として各地域の中学校から、多くの生徒さんをはじめ、保護者や教員の方々にご参加いただきました。その皆様に、次のような話をいたしました。
本日は川之石高校「川高」の一日体験入学にご参加いただき、誠にありがとうございます。心からお礼を申し上げますとともに、皆様を大歓迎いたします。新型コロナウイルス感染症の急速な感染拡大に伴い、感染防止の観点から、体験入学の内容を一部変更させていただき、この開会行事も放送にて行います。皆様に直接お話できないことはとても残念ではありますが、どうかご理解をいただきますよう、お願いいたします。
さて、7月12日に、愛媛県県立学校振興計画案が公表されました。テレビや新聞でも報道されましたので、ご存じの方もおられことと思いますが、計画では、4年後の令和8年度に、川之石高校、八幡浜高校、八幡浜工業高校の3校が統合されて1校になる案が示されました。計画案は、地域説明会などを経て、令和5年1月頃に正式に決定されると聞いています。ただ、もし計画案どおりになったとしても、令和8年4月の新入生から統合校の1年生となりますから、令和5年4月に高校1年生となる現在中学3年の生徒の皆さんにとって、高校在学中の3年間は今の状況と同じで変わりはありません。心配をなされずに、進路について考えたり勉強に励んだりしてください。
今日は、本校の生徒や教職員だけでなく、校舎の前に聳え立つ「ヒマラヤスギ」も皆さんをお迎えしました。ぜひ、少し離れた場所から、ゆっくりとご覧になってください。創立108年目を迎える、伝統ある本校の歴史とともに、川高を見守ってくれている本校のシンボル・ツリーです。その大きく威厳に満ちた美しい姿に私は圧倒され、魅了されました。そして、昨日と今日とでは見分けがつかないほどの少しの成長を100年間続け、今の姿となったことに深く感動しました。このヒマラヤスギのように、本校では、毎日の授業や学校行事、部活動など大事にすることをとおして、いつも基礎・基本に立ちかえり、小さなことやさりげないことを大切にし、相手の気持ちを思いやることのできる生徒を育てています。
そのような川高の特長を表すキャッチフレーズは、皆さんにお配りした、緑色の表紙の学校案内パンフレットの表紙にある、「新しい自分がみつかる」学校です。本校は、県内に3校ある総合学科の県立高校の一つとして、生徒一人一人が自分の興味・関心や能力、適性とじっくりと向き合い、希望の進路を見付け、意欲的に学習できる環境を整えています。
学校案内パンフレットには、本校が県立高校では唯一の福祉系高校であることや、農業科目を多数用意して農産物の生産・販売だけでなく加工品の生産・販売も行う中で最先端の取組を実施していることなど、入学後に、六つのコースに分かれて専門的な学習ができることを詳しく書いています。ぜひ、ゆっくりと読んでください。
この後、生徒会の生徒たちによる学校紹介の後、授業を体験していただいたり部活動を見学していただいたりします。新型コロナウイルス感染症や熱中症の対策に努めておりますが、生徒の皆さんは、どうか十分に気をつけていただき、少しでも体調に不安を感じた場合は決して無理をなされず、近くにいる本校の教職員に遠慮なく声をかけてください。
本日の「一日体験入学」が、皆さんに川高を知っていただく機会となり、進路選択の参考となりましたら、とてもうれしく思います。終わりに、生徒の皆さんが、この夏休みと2学期以降の学校生活において、ご自分の進路実現のために充実した毎日を過ごされることを心から願い、あいさつといたします。
本校PTAだより 第49号「ひまらや杉」に、「大切にしたい『姿勢』」と題した文章を書かせていただきました。
校長は残念ながら授業を受け持ちません。ですから、式辞や学校行事でのあいさつなどの機会を、生徒に語りかけることのできる貴重な授業時間だと思い、大切にしています。
式や行事に応じて話す内容は異なっても、繰り返し伝えていることの一つは、何かに取り組むときや人と向き合うときの、心の持ち方や取り組み方、すなわち「姿勢」についてです。基礎・基本をいつも意識し、小さなことやさりげないことを大切にする。相手の状況や気持ちを思いやりながら言葉のキャッチボールに努める。そして、相手に投げかける言葉そのものを大事に選ぶ。生徒と教職員がともに、これらの姿勢を保ち守り続けようとすれば、校歌に歌われている、生徒が深き真を究め、清き心を育み、若き力を伸ばすことのできる学校になると信じています。
特に、様々なことに取り組む中で味わう喜びや幸福感からだけでなく、悲しみや挫折感からも人としての豊かさを身に付けていく生徒にどのような言葉をかけるか。これまでずっとそれを気に掛けてきました。そのような中で、以前に先輩教員から聞いた話を紹介いたします。
ある年の愛媛新聞の「つぶやき」の欄に、松山市のある母親からの投稿が載っていました。内容は、「県外で一人暮らしの娘が電話口で泣いた。『傷つくことばっかり』」これに対し母親は「傷つけられているのではない。磨かれているのよ。」と諭した、というものだったそうです。そして、その先輩教員は、こう話を続けられました。「自分は磨かれているのだと視点を変えるだけで、今していることが自分にとって、とても意味のあることに変わる。その時々の痛みを、自分を磨いてくれる、鍛えてくれるものだと考えることこそ大切なのではないか」。投稿者のわが子への言葉かけと、先輩教員の言葉は、「自分を鍛える」という視点を持てば、自分の、人としての豊かさを増すことにつながると改めて教えてくれるものでした。言葉を大事に選ぶという姿勢を意識していたからこそ、それに気付けたのだと思います。
生徒たちには、様々な未来が広がっていきます。先に述べた「姿勢」を保ち守る雰囲気を学校全体に醸成し、生徒たちの可能性を高め、力を育み続けます。
夏休みを迎えるに当たり、本校の進路課から生徒たちに、令和4年度『進路の手引き』を配布しました。その巻頭言に「夏は熱く」と題した、下のようなメッセージを書きました。
生徒の皆さん、新型コロナウイルス感染症や熱中症などに十分気を付けながら、充実した夏休みにしてください。
3年次生にとって今年の夏は、自分の進路を決定する上で、とても重要な時期です。1年次生と2年次生にとっても、進路について考えたり、その実現に向けて準備をしたりする時間が十分にとれる夏休みは、とても大切な期間です。皆さんは、そのような「夏」に、何をどのように取り組みますか。私が働き始めたころに経験したことを参考にしてもらいながら、将来、社会に出て働くこととなる自分の姿を想像したり、自分の進路希望や夢を実現させるための夏の過ごし方について考えたりしてほしいと思います。
私は県立高校の教員(社会科)に採用されたものの、最初の職場は学校ではなく、県内の遺跡を発掘する調査センターでした。考古学を専門的には学んだことがなく、他の職員に、遺跡を識別するための土の色の見分け方から教わりました。1年目は、約2千年前の弥生時代の集落跡を、私を含む5名の職員と15名の作業員とで調査しながら仕事を覚えました。
次の年は、いくつかの調査地を任され、初めて主担当となったのは、標高約140mの山頂近くにあった遺跡でした。7月初め、私と臨時職員、作業員3名の計5名で発掘を行い、当初は10日程で調査を終える予定でした。しかし、予測を超える量の遺物が出土して、結局、調査は2か月間に及びました。
主担当者には、関係者と調整しながら調査の進み具合に応じて作業の日程や方法を決め、作業員の勤務や健康を管理し、必要な道具や機械を調達するなど、様々な業務がありました。山のふもとから調査地までは、人一人が歩ける程の狭い急な山道で、自動車はもちろん小型重機も通れなかったので発掘はすべて手作業となり、出土遺物も多いので作業員を増やしました。また、調査期間が延びる中、事務や休憩用のプレハブ小屋を建てることも、電気や水道、電話を引くこともできず、雨や強い日差しを避けるためのテント二張りを、みんなで一緒に担ぎ上げました。
その年の夏は、例年にない猛暑日続きで、毎朝、カメラ機材の入ったケースを背負い、全員で使う手洗い用水を入れたポリ容器を両手に持って山道を登るのが、私の仕事の始まりでした。そして、携帯電話などがなかった時代でしたので、昼休みに山を降りて、公衆電話から、本部に連絡をしたり、関係者や業者と打ち合わせをしたりしました。発掘状況によって必要なことやものは変わり、それに応じて仕事の段取りは違ってきます。現場責任者である以上、経験の浅さは言い訳にはなりません。不便な環境下であることを踏まえ、状況の変化を見て今後を予測し、対応を決断して行動に移す。これを、失敗しながら無我夢中で繰り返した、長くもあり短くもあった、暑い夏の熱い日々でした。
教員4年目に南予の小規模校へ異動し、初めて高校生と向き合いました。3年生のクラス担任となり、日本史を教えましたが、時間割の都合上、大学受験に対応させるためにはどうしても授業時間が足りません。そこで、生徒の希望を確認し保護者の承諾を得た上で、男子生徒7人に夏休み返上で臨時補習を行いました。その中の一人は、クラスの卒業文集に3年間の思い出として、その臨時補習を挙げていました。彼らと私にとって熱い夏でした。
昨年度(令和3年度)の『進路の手引き』の巻頭言でも少し紹介しましが、目標を達成するための方法に、「フォアキャスティング」と「バックキャスティング」という二つの方法があります。フォアキャスティングは、「今」を出発点として、その時々の状況の中で実現可能と考えられることを積み上げながら、未来の目標を目指す方法です。教員となって最初の3年間の調査センター勤務では、主にこの方法で仕事を進めました。一方、バックキャスティングは、「未来」のある時点に目標を設定しておき、そこから振り返って現在すべきことを考える方法です。教員4年目で赴任した高校で実施した、受験に必要な学習内容を把握し、計画を立てて勉強した夏休みの臨時補習は、この方法で行いました。働き始めたころの夏の日々の経験を、私は今でも心の支えの一つとし、仕事をする上で生かしています。
生徒の皆さんは、進路実現への備えや勉強、部活動などを、フォアキャスティングとバックキャスティングのどちらの方法で取り組み、熱い夏にしますか。
7月20日(水)に第1学期終業式を校内放送にて行い、式辞として次のような話をいたしました。
1学期の終業式に当たり、生徒の皆さんに伝えたいことが二つあります。
一つは、学校外の方から教えていただいた、本校生徒のようすについてです。ある高校の教員から本校の教員に、次のような連絡がありました。先日、その方が、学校行事の一環として自分の学校の生徒たちと一緒に保内町内を見学されていたところ、偶然、本校の生徒たちに出会い、本校生の方から気持ちの良い挨拶をしてくれた、というものでした。わざわざ連絡をくださったということは、当たり前のようにさわやかな挨拶をする本校生の姿が、その方にとって、とても印象深かったのだろうと思います。
私も、皆さんがいつも、大きな声で挨拶やお礼をしているようすにいつも感心しています。そして、その明るく響く声のおかげで前向きな気持ちになれることに感謝しています。「おはようございます」、「こんにちは」、「さようなら」、「ありがとうございます」。挨拶やお礼の言葉をかける皆さんの気持ちは、必ず相手の心に届き、まるで魔法のように、相手の気持ちを柔らかくし、優しくします。挨拶とお礼の声が響き合う川高で、これからもあり続けましょう。
挨拶やお礼は、まず、自分の意識を挨拶やお礼をする相手に向けることから始まります。自分の意識を相手に向ける、すなわち、自分の思いを相手にやる(おくる)。皆さんに伝えたいことの二つ目は、その「思いやり」についてです。人と会い、話し、一緒に活動すること、つまり、人と関わり合うことは、うれしく楽しいことが多い半面、自分の思い通りにならず、我慢をしなくてはならなかったり、辛い思いをしたりすることもあります。しかし、人間は、衣食住のどれ一つをとっても、自分の力だけで解決できるものはなく、いろいろな人と関わり、助け合いながら生活していかなくてはなりません。皆さんは、やがて高校を卒業し、実社会で活動する「社会人」として、生活状況や仕事、立場などが異なる、多くの人と関わります。そのときにとても大切となるのは、人の気持ちや状況などを気にかけ、人の身になって考え、心を配り、優しく接すること、つまり、思いやりの気持ちを持ち、それを行動にあらわすことです。思いやりのある人は素敵でカッコよく、幸せな人だと思います。
先日の体育祭結団式で、英語の「imagine」(イマジン)という言葉を皆さんに伝えました。日本語では、「想像する」と訳されます。思いやりは、相手の気持ちや置かれている状況などを想像することから始まります。元気な挨拶をするときに、そのことを思い浮かべてくれたらとてもうれしいです。
皆さんが、新型コロナウイルス感染症の予防をしっかりと行い、元気で 有意義な夏休みを過ごされることを、心から願っています。そして、2学期の始業式で、皆さん全員と笑顔で再会できることを楽しみにして、あいさつとします。