進路の手引き「巻頭言」
2025年7月18日 10時34分進路の手引きの「巻頭言」に、進路指導について、次のような文章を掲載させていただきました。
私が、これまでの教員生活の中で、教科指導と同じくらい力を入れたと思っているのが進路指導です。20代の頃には、HR担任として、ベテランの教員に教えていただきながら、若い教員同士で話し合い、時には競い合うように、クラス生徒の進路指導に取り組みました。30代半ばに校内の進路(進学)の責任者を任された際には、それまでに学んできた進路指導のノウハウを、HR担任や教科担任と共有し、学校全体としての進路指導体制や教員の意識の改革を図ろうと努力しました。
HR担任として自クラスの、そして進路責任者として学校全体の、進路指導の充実に取り組んだ経験から感じているのは、進路指導には、その生徒一人一人に関わる教員の協力が不可欠であり、一人の生徒のために関係教員が総力をあげて取り組まなければ、生徒の高い進路目標の達成を支援することは難しいということです。
また、それと同時に感じていることとして、そのような支援を受けて目標を達成する生徒は、周囲の教員に、この生徒のために自分ができることは全てやってやろう、と思わせるような、明確な進路目標、目標達成への強い意志、そして支援してくれる周囲への感謝の気持ち、などを持っていたということです。
生徒の皆さんも、これから、勉強や部活動をがんばり、進路実現に必要な力を身に付けていくことと思いますが、一人でできることには限りがあります。保護者の方や先生方から支援していただきながら、そしてそのためには支援を得られるような真摯な姿勢で、目標達成のため努力を重ねてほしいと思います。
以下、進路について私が思うことを書いてみます。箇条書きにするので、気になる部分だけでも読んでいただければと思います。私が川之石高校の校長となり、この進路の手引きの「巻頭言」を書くのも、もう3回目となりましたので、昨年、一昨年と重なることは省いています。特に大事なことは、先に書いていますので、過去のものも読んでもらえれば幸いです。(本校HP『校長室より』に掲載されています。)
○「過去の成功体験に基づく進路指導の危うさ」
自戒を込めて書くと、この巻頭言の前半で書いた「進路指導」とは、いわゆる「出口指導」と批判的に呼ばれるものに近いかと思います。出口指導とは、入学試験や就職試験に合格させるための指導に終始することを意味します。生徒が将来の夢を実現するために希望し、教員としてもそれが適当だと判断した大学や企業に合格させるための指導を行うことは、決して悪いことだとは思いません。
しかし今、社会は大きく変わり、予測不可能な時代と呼ばれています。この大学・企業に進めば将来はこうなるだろう、と予測できていた時代から、どのような進路を選んでも、その将来は確実とは言えない時代となったのです。教員は、それまでの自分自身、あるいは過去に関わった生徒たちの成功体験に基づいて進路指導を行うことの危うさを自覚した上で、指導に臨まなくてはならないと感じています。
○「予測不可能な時代の進路指導とは、卒業後も必要とされる力を身に付けさせるもの」
これまでの日本では、多くの企業が終身雇用制を採用していました。しかし今、転職者は全世代で大きく増加しており、この5年間に、全世代平均で約2.5倍、特に50代では約5.3倍となっています。転職により賃金が増える割合も高まっており、解雇されたというような消極的な転職ではなく、よりよい労働環境、自分の能力を発揮できる職場を求めてというような積極的な転職が増えているのです。
そうなると、進路を決める力は、高校卒業時に大学・企業を選ぶときのみに必要なものではなく、生涯にわたって必要な力となってきます。つまり、高校卒業後も、自分で進路を選び実現できる力を身に付けさせることが、今の時代に求められる進路指導であると言われるようになったのです。生徒の皆さんは、卒業後も、自分で進路を調べ、選び、決定し続けられるような力を身に付けておく必要があるのだということを意識しながら、進路指導に関するHR活動や行事に参加してほしいと思います。
○「努力の成果は階段状に現れる」
生徒の皆さんは、これから、進路実現につながる勉強や部活動に取り組んでいくことと思いますが、その成果は、努力と比例しては現れません。成果は、階段状に現れます。努力しても努力しても成果が現れない時期を我慢し粘り強く努力を続ければ、ポンッと成果が現れます。そしてそのように成果が上がれば、高い山に登ったのと一緒で、見える風景(目指せる進路目標)が変わってきます。まずは山に登ってみましょう。
『校長室より』の中の『R6進路の手引き』、「決まれば対策を講じることができる、けど、決まっていなくても大丈夫」に続きます。読んでみてください。