ブログ

進路の手引き「巻頭言」

2023年7月14日 10時30分
校長室より

進路指導は、学校、そして教職員の仕事の中でも、最も大切な、最も責任の重いものだと考えています。

1学期末配布の、令和5年度進路の手引き「巻頭言」で、次のような文章を書かせていただきました。

 

〇高校生がなりたい職業は

 昨年末、LINEリサーチが、日本全国の高校生を対象に、なりたい職業について調査した結果を公開しました。

 それによると、男子は、1位:公務員、2位:システムエンジニア・プログラマー、3位:機械エンジニア・整備士、4位:教員、5位:事務職・営業職で、女子は、1位:公務員、2位:看護師、3位:教員、4位:保育士、5位:事務職・営業職でした。

 これを見ると、身近で、イメージしやすい職業が並んでいることが分かります。

 〇どんな職業があるのか知ろう

 逆に言うと、身近になく、イメージしにくい職業については、なりたいと思わないし、そもそも思いつくこともできないですよね。皆さんは、東京のオフィス街や、大学や企業の研究機関が集まった学園都市といわれるような街を歩いたことがありますか。私は、社会人になってから初めてそのような街を訪問したのですが、そこには、テレビ局や出版社、有名ファッションブランド、商社、宇宙や航空・海運、情報通信、といった、地方にはない企業や研究機関の建物が並び、多くの人々が働いていました。中には、黒塗りのリムジンの後部座席に座って新聞を広げる、典型的な大企業の重役といったような人もいて、本当に、こんな映画に出てくるような職業に就いている人が、この世の中にはいるんだなあと感心するとともに、自分自身も、このような街に生まれていたら、違った職業を選んでいたかもしれないなあと感じたことを覚えています。

 私たちが住む地方の町は、中央の都市に比べて、どうしても職業の種類が少なく、イメージがつかみにくいというハンデがあります。幸い、今は、ネットが発達し、必要な情報を手に入れやすくなっていますので、まずは、どんな職業があるのか、知るところからスタートしてみましょう。

 〇興味を持てる職業があったら調べ行動してみよう

 いろいろな職業について知る中で、興味を持てるものがあったら、その職業について調べてみましょう。その職業に就くためには、どんな資格がいるのか、その資格を得るためにはどのような学校に進んだり、実務経験を積んだりする必要があるのか、そのためには高校在学中に、どのような科目を選択し、どれくらいの成績を取っておくべきなのか、などが分かってくるはずです。また、学費がどれくらいかかるのか、授業料減免制度を使えば学費をどれくらいまで抑えられるのか、奨学金にはどのようなものがあるのか、などについても調べてみましょう。2020年度から、国の新しい給付奨学金(返済不要)も始まっています。進学資金の計画を立てるときのシミュレーションができるWebサイトもあります。自分で調べたり、先生に相談したり、実際に学校や会社を訪問したりしてみましょう。修学旅行の時に、自分が興味を持っている学校や会社を訪問した人もこれまでにはいましたよ。

 よく調べ行動しないまま、学力面や経済面から、自分の進路に限界を設けてしまうのはもったいないと思います。進路は、先が見えないという意味で迷路と似ていますが、迷路も、まずは進んでみないと、選んだ道が正しいのか行き止まりなのかは分かりません。進路も、まずは進んでみることが大切です。行き止まりだったら引き返せばいいだけです。今、人生は100年時代と言われています。やり直す時間は十分にあります。

 〇納得できる進路選択をしよう

 誰でも、「あのときこうしていたらなあ」と考えることはあると思います。人は、いろいろな経験をしたり知識を身に付けたりしながら、だんだんと成長していくものですから、成長した今の自分が、過去の幼かった自分の行動を振り返って、このように感じることがあるのは、ある意味当然だと思います。

 進路についても同様です。今、皆さんは、自分の進路を決定したり決定しようとしたりしているところだと思いますが、将来、高校時代に選択した進路について、後悔することがあるかもしれません。

 しかし、そのようなときでも、それが、高校生の自分なりに、精いっぱい調べ行動した結果であるのなら、納得はできるのではないでしょうか。

 皆さんの進路選択が、将来、納得できるものとなるよう期待し、応援しています。

 

1年次集団研修

2023年4月27日 13時26分
校長室より

4月21日(金)に行われた1年次集団研修で、次のようなお話をさせていただきました。

その後、私もオリエンテーリングに参加し、川之石の町を、1年次生といっしょに歩かせていただきました。私は、地歴・公民科の教員ですので、川之石の周辺は、巡検で見てまわったことがあり、また家族で遊びに来たこともあったのですが、知らない場所もあって新鮮な気持ちを感じることができました。

 

皆さん、おはようございます。入学式から10日間が過ぎました。新しい生活には慣れたでしょうか。皆さんの様子を、直接見られる機会は少ないのですが、校長室には、皆さんの、ホームルーム活動の記録が回ってきます。

「生徒感想」という欄を見ると、

〇新しい環境で不安もあったが、充実した高校生活を送れるようにしたい。

〇初めての高校生活で分からないことだらけだけれど、少しずつ慣れてきた。

〇このみんなで、高校生活を送っていくのだと実感し、楽しみになった。

〇ボランティア認定の説明を聞いて、やってみたいと思った。

など、不安がある中にも、新しい生活への期待や、やる気を持って、毎日頑張っている皆さんの様子が伝わってきて、大変うれしく思っています。

さて、今日は、何を話そうか考えたのですが、皆さんが入学する前日の始業式で、2・3年生の皆さんに伝えたお願いを、皆さんにもお話ししようと思います。

作家の方と比べてもいけませんが、作家の最初の作品には、その人のもっとも言いたいことが込められているとも言われます。2・3年生にしたお願いは、私が、川之石高校の校長となって初めてのお願いです。今日以降も、皆さんにお話しする機会があると思いますが、そこにもつながってくる、私にとっては大切なお願いですので、少し聞いてください。

私が皆さんにお願いしたいのは、自分が「どうなりたいのか」「何をしたいのか」という課題に正面から向き合い、目指すべき目標を明確にして、その実現に、全力で取り組んでほしいということです。高校時代は、将来、「なりたい自分」、になり、「やりたいこと」、をやれるようになるための、かけがえのない時間です。そこにハードルがあったとしても、それを乗り越え、夢を追いかける、強い気持ちを持ってほしいと思います。自分の目標を第一に考え、行動することは、周りから見ると、時には、自分勝手、わがまま、と受け取られてしまうこともあるかもしれませんが、私は、夢の実現のためには、自分を貫くことも必要だと思います。

皆さんは、友達同士が、互いに競い合い、励ましあって共に向上するという意味で使われる「切磋琢磨」という言葉を知っていると思います。石は磨くことによって宝石となりますが、最初からぶつかることを恐れ、その場でじっと止まっていては、石は磨かれません。

皆さんは、今、新しいクラス、新しい先生方、新しい先輩といった、新しい人間関係の中で過ごしていますが、その中で、まずは、自分がやりたいことを見つけ、進んでみること、そしてそれがぶつかり合った時には、互いのやりたいことを認め合い、尊重し合うこと、これが、私から、皆さんへのお願いです。この川之石高校が、皆さんの夢の実現につながる飛躍の場所となることを期待しています

 

 

入学式

2023年4月12日 10時31分
校長室より

4月11日に、85名の新入生を迎え、全校250名の川高生による新たな学校生活がスタートしました。

入学式では、新入生と保護者の皆様に、式辞として次のような話をさせていただきました。

 

色あざやかな花が美しく咲きほこり、新緑の若葉がすくすくと伸びる今日のよき日に、PTA会長・篠澤隆之様、同窓会長・川上真一様の御臨席を賜り、多くの保護者の皆様の御出席のもと、令和5年度 愛媛県立川之石高等学校 第76回入学式を挙行できますことは、本校教職員一同の大きな喜びでございます。心からお礼申し上げます。

 ただ今、入学を許可いたしました85名の新入生の皆さん、そして保護者の皆様、本当におめでとうございます。在校生、教職員を代表いたしまして、あらためてお祝いを申し上げますとともに、心から歓迎いたします。
本校は、創立109年目を迎える、歴史と伝統のある学校です。平成8年に総合学科となってから、今年で28年目となり、生徒の皆さん一人一人が、将来、何をやりたいのか考え、そのために必要な科目を自由に選択し、自分だけの時間割を作って学習する体制が確立されています。新入生の皆さんには、これからの3年間、主体性を持って学び、自分の夢の実現に向かって、充実した高校生活を送ってほしいと願っています。
 その高校生活の始まりに当たり、皆さんに、本校の校訓についてお話をします。
校訓の一つ目は、「自学」です。自分から学び、判断し、行動する力を身に付ける、ということです。将来の目標を明確にして、その実現に向けて、自ら勉強に取り組んでください。うまくいかないときもあるかもしれませんが、それを乗り越え、夢を実現するのだという、強い気持ちを持ってほしいと思います。
 二つ目は、「誠実」です。真心を持って、人や物事に接する、ということです。自分や自分の夢を大切にしながら、友人や家族、地域の方々も大切にしてください。そしてその気持ちを、日々のあいさつや礼儀、マナーにより示していくことで、皆さん自身も周囲から信頼され、大切にしてもらえるものと思います。
 三つめは、「審美」です。本当の美しさを見極めることです。美しさを追求しようと、歴史や文化、自然や人文、スポーツや健康といったいろいろな分野に関心を持つことで、多種多様な、そして様々な角度からの、ものの見方や考え方が育まれます。人にとっての美しさとは何か、人として何が大切なのかを考え続けてください。
 皆さん、御存じのように、ここ、川之石は、古くから天然の良港を生かした海運業が盛んで、木蝋や銅鉱石の交易を通して、人々の目は、広く外の世界へと開かれてきました。その進取の気性は、この地において、四国初となる紡績会社が設立され、電灯が導入されたことや、愛媛で初となる銀行が設立されたことにもよく現れています。
私は、新入生の皆さんが、この川之石の地で、この3つの校訓を実践することで、社会に羽ばたく人材として、大きく成長されることを心から期待しています。
最後になりましたが、保護者の皆様に申し上げます。お子様は、これから一歩一歩、自立への道を歩むことになります。心の優しい、生きる力を持った若者に育つことは、御家庭と学校の共通の願いです。私たち教職員一同は、本日からお子様をお預かりし、御家庭と協力しながら、精一杯、その歩みを支えてまいります。
ここにあらためて、本校の教育活動に対する御理解と御支援を賜りますよう、お願いを申し上げ、式辞といたします。

 

 

始業式

2023年4月12日 10時21分
校長室より

4月10日に始業式があり、2、3年生の皆さんに、次のようなお話をさせていただきました。

 

皆さん、おはようございます。

令和5年度、新しい学年の始まりです。
明日、入学してくる1年生、そして、先ほど紹介のあった、新任者を加えた教職員の方々とともに、これまで築いてきた川之石高校の魅力を、更に高める1年にしていきましょう。
そして、その新たなスタートを切る皆さんに、私から、二つ、お願いをします。
一つは、自分が「どうなりたいのか」「何をしたいのか」という課題に正面から向き合い、目指すべき目標を明確にして、その実現に、全力で取り組んでほしいということです。
高校時代は、将来、「なりたい自分」、になり、「やりたいこと」、をやれるようになるための、かけがえのない時間です。そこにハードルがあったとしても、それを乗り越え、夢を追いかける、強い気持ちを持ってほしいと思います。
二つ目は、夢を追いかける仲間を、みんなが応援し合う、そういう気持ちも、育んでほしいということです。自分の目標を第一に考え、その実現に向かって突き進むことは、周りから見ると、時には、自分勝手、わがまま、と受け取られてしまうこともあるかもしれませんが、私は、夢の実現のためには、自分を貫くことも必要だと思います。
皆さんは、友達同士が、互いに競い合い、励ましあって共に向上するという意味で使われる「切磋琢磨」という言葉を御存知だと思います。石は磨くことによって宝石となりますが、最初からぶつかることを恐れ、その場にとどまり続けては、石は磨かれません。
今日から、新しいホームルーム、新しい先生方、新しい後輩と、新たな人間関係の中で皆さんは過ごしていくことになりますが、その中で、まずは、自分がやりたいことを見つけ進んでみること、そしてそれがぶつかり合った時には、互いのやりたいことを認め合い、尊重し合う、寛容の心を育てること、これが、始業式に当たっての私のお願いです。
本日から始まる令和5年度が、皆さんの夢の実現に向けた大きな成長の1年となることを期待して、式辞といたします。

令和5年度のスタート

2023年4月12日 09時51分
校長室より

今年度、校長として赴任してまいりました、矢野重禎(やのしげよし)と申します。

本校、赴任前は、高校教育課に勤務しており、その際には、川之石高校創立100周年記念式典にも参加させていただきました。

また、新規採用が、当時は同じ西宇和郡であった三瓶高校で、本校とも交流させていただくなど、この川之石の地とのご縁を感じております。

今後、本校が、より魅力的な学校となるよう努力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

離任のあいさつ

2023年3月29日 18時29分

 3月29日(水)の10時過ぎから離任式を行いました。本校では、令和4年度末に14名の教職員が異動します。私もその内の一人です。
 離任式前の教職員が集う会にて、「いつも明るいあいさつをしてくださって、うれしかったです」、「先生がしてくださる話の一つ一つが心に刺さり、支えになりました」等の言葉の贈り物を生徒たちからもらったことを紹介し、宝物のようなそれらの言葉を支えとして、これらからも小さなことやさりげないことを大切にしていきたいと話しました。続けて、何かを話すときや書くときには必ずそれを聞く人や読む人がいることに触れ、相手を思いやりながら言葉を発するという小さくさりげない行いは最も大事なことの一つであるように思う、と話しました。
 そして、その後の離任式で、生徒たちに次のようなメッセージを伝えました。

 生徒の皆さんが私の話を聞き漏らすまいと一生懸命に聞いてくれることを、いつもうれしく思っていました。ありがとうございました。
 相手の話をしっかりと聴き、そして、相手のことを思いながら丁寧に話す。その気持ちや態度は、本校が大切にしている校訓の一つ、「誠実」の現れです。皆さんには誠実な人であってほしいと心から願っています。
 笑顔を忘れず、明るく前向きな気持ちで学校生活を送ってください。もし、悩みや迷いが生まれ、私の言葉をもう一度聞いてみたいと思ったら、学校ホームページの「校長室より」を開けてください。これまで話したことや書いたことをすべて載せています。少しでも皆さんの力になることができれば、とても幸せです。
 皆さんを、いつも応援しています。さようなら。

川高生の皆さんへ

2023年3月28日 19時15分

 生徒の皆さん、春休みをどのように過ごされていますか。エネルギーを十分に蓄え、4月からも笑顔で楽しい毎日にしてください。生徒会誌『たちばな』第64号の巻頭言に書いた「挑戦し、失敗し、挑戦し、」を載せ、皆さんにエールを送ります。


 先日、ある新聞記事を読み、自分が小学生ならこのような理科の授業を受けたい、と思うことがありました。「教科書とは違った子どもの実験結果を『失敗』とみなし、教科書通りの結果を『成功』として取り上げる授業」は「やってはいけない」と書かれていました。そして、「これまで『失敗』と言っていた実験は『予想とは関係がないことを証明した』という意味で、『成功』実験と等価値であることを、子どもに指導する」ことの重要性が強調されていました。加えて、子どもが「今もこの先の人生でも、幸福で心豊かに生きることが第一」であり、理科の学びがその点に貢献することが求められる、という内容でした。
 私は、アメリカの発明家・企業家であったトーマス・エジソンの、「私は失敗したことがない。ただ、一万とおりの、うまくいかない方法を見付けただけだ」という言葉を思い出しました。エジソンは、他にも同様な言葉を残しています。「失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いなさい。」「私は決して失望などしない。なぜなら、どのような失敗も新たな一歩となるからだ。」「困るということは、次の新しい世界を発見する扉である。」エジソンは、特許数1,300件を超える発明を行って事業化に努力し、蓄音機や白熱電球、活動写真などの発明によって人々の生活を一変させた「発明王」です。彼の言葉からは強靭な精神力や不屈の信念とともに、旺盛な好奇心や探究心がにじみ出ています。先述の新聞記事のように、失敗も成功も等しい価値を持つと考えて前へ進み、幸福で心豊かに生きたのではないでしょうか。

 実験での失敗と同じく、生活の中での失敗も辛く悲しいものです。時には、悔しくて情けない気持ちになり、自分を責めたり自己嫌悪に陥ったりします。私はこれまで多くの失敗をしました。しかし、今となれば、その一つひとつは私の人生にとって意味のある「勉強」でした。
 大学1年生のころ、レストランで給仕のアルバイトをしました。忙しいときほど、段取りよく仕事を片付けることにやりがいを感じて楽しく、ある時、客席から下げた食器を洗い場へ運び込んだ際に、思わず口笛を吹いてしまいました。すぐに、料理長の「止めろ」という鋭い声が飛んできました。私は、仕事に追われていたことに甘え、食器を置いて謝りに行くこともせず、「はーい」という軽い返事だけで終わらせてしまいました。すると、料理長が普段とは違う険しい表情でやって来て、「お前とは一緒に働きたくない。帰れ」と厳しい口調で私を一喝しました。その後、店長が一緒にお詫びをしてくれて許されましたが、仕事場の真剣な雰囲気を二度までも乱した浅はかさと、プライドを持って働いておられる方々への敬意を欠いた態度を深く反省しました。そして、人と誠実に向き合うことの大事さとともに、働くことの重みを痛感しました。
 また、教員になって初めてクラス担任をしたときのことです。ホームルーム委員は、私の依頼や指示に真面目に応えてくれる女子生徒でした。笑顔を絶やさないその生徒の細やかな気遣いと丁寧な仕事ぶりに、随分と助けられました。5月の下旬、家庭訪問週間に彼女のお宅へ伺い、母親と懇談をしました。私は彼女の献身的な活躍を伝え、ほめ上げました。すると母親は、「疲れているのか、毎日学校から帰るとすぐ横になります」と教えてくれたのです。私は言葉を失いました。期待に応える喜びと多忙ゆえのつらさとの板挟みで苦しんでいることに気付けなかったのです。しかも、感謝とねぎらいの言葉が彼女を追い詰めていたことにも無自覚でした。それからは、生徒への接し方や教員としての在り方を深く考えるようになりました。

 川之石高校(川高)の校歌には、自分の力を信じて前向きな一歩を踏み出してほしいという願いが込められています。本校同窓会関西支部長の城岡陽志(しろおか きよし)様は、高校を卒業して大阪のネジ商社に就職され、その後独立して、1980年に太陽パーツ工業を創業なされました。以来、一貫して「どうすればお客様に喜んで頂けるか」を基本テーマに会社を経営され、現在、国内外に多くの事業所や工場、関連会社をもつ太陽パーツ株式会社取締役会長として活躍なされています。城岡様の経営理念や人材育成の成果は、テレビやラジオ、雑誌等でも取り上げられ、令和4年12月号の『中等教育資料No.1039』(文部科学省)にも、「教育小景」というコラム欄に、「大失敗賞」という題名で、次のような内容のエッセイを書かれています。
 城岡様は、自社製品を持ちたいという思いで、常日頃から社員と夢を語っておられました。ある日、一人の社員からカー用品業界の製品の提案があり、企画をスタートさせて新商品を製造・販売されました。しかし、カー用品業界のルールを知らなかったこともあって、結果的に多額の損失が出てしまったそうです。城岡様は、続けてこう書かれています。「担当者はふさぎ込み、周囲は声も掛けられない暗い雰囲気の中、打開策が浮かばずに悩んでいたとき、壁に掛かっていた額の『ピンチはチャンスの芽』が目に入りました。そうだ、今はピンチ。これをチャンスの芽に変えればいいのだと。そこで、この失敗を単なる失敗として終わらせず、貴重なノウハウとし、元気を出してまたチャレンジしようという願いで、経営発表会の場で『大失敗賞』として表彰することにしたのです。後日、受賞者の当人は『クジラは一度大きく潜って大きくジャンプして飛び上がる。自分もこのままでは終わらないぞ』との決意で、賞金でクジラのネクタイピンを買ったそうです。これを聞いたとき、『大失敗賞』で奮起してくれたことにホッとしました。その後、彼は大きな事業の立ち上げに志願し、見事失敗を成功に変えてみせたのです。」そして、エッセイの最後を、こう締めくくっておられます。「人生100年時代、長い人生には進学・就職などのターニングポイントがあります。全てのことがうまくいくなどありえません。失敗・挫折を経験して、ノウハウや知恵、考える力がついてきます。要は自分の気持ちの持ち方、考え方で道は開けます。生徒の皆さんには、恐れずチャレンジする人生を歩んでほしいと思います。」いつも川之石高校を気に懸け、支援してくださっている城岡様の、「生徒の皆さん」という言葉が、私には、「川高生の皆さん」という呼びかけに思えました。
 3年次生の皆さん、卒業おめでとうございます。自分の道を開くために挑戦し、失敗してもそれを新たな一歩として、挑戦し続けてください。

令和4年度 第3学期終業式 式辞

2023年3月20日 20時20分

 3月20日(月)に第3学期終業式を行いました。式辞として、次のような話を生徒たちにしました。

 これまで、皆さんにいろいろな話をしました。1学期末に発行したPTAだより「ひまらや杉」第49号で書いたように、私は式辞や学校行事でのあいさつなどの機会を、皆さんに語りかけることのできる貴重な「授業時間」だと思い、大切にしてきました。今日も一つだけ伝えておきたいことがあります。
 今、全国の高校において、学校をより魅力的にする「高校の魅力化」が重要な課題の一つとなっています。本校も、皆さんが楽しく喜びにあふれた学校生活を送ることができるよう、さまざまな教育活動の充実に努めています。
 ただ、魅力的な学校であるかどうかは、有意義な教育活動の多さだけで判断してはならないとも思っています。なぜなら、魅力的な学校とは魅力的な活動が多く用意されている学校である以上に、魅力的な生徒や教職員がたくさんいる学校のことだと考えているからです。
 「魅力」とは、人の心をひきつけて夢中にさせる不思議な力のことを言います。ですから、魅力的な人とは、例えば、その人の言葉や行動、雰囲気などに接すると、なぜか気持ちが落ち着いたり明るくなったり、勇気づけられたり前向きになれたりするような、信頼できる人のことを言うのでしょう。私は、皆さんに、そういう人になってほしいと願っていますし、そういう人がたくさんいる川高にしたいと考えています。
 そこで、そのために大事にし続けたいと思っていることがあります。まず、自分らしさや自分の考えを大切にし、それを磨いていくこと。次に、他の人への思いやりや気遣いを大切にし、それを深めていこと。そして、笑顔と素直さを忘れず、何事にも一生懸命に取り組むこと。これらを、生徒の皆さんと教職員全員が心がけることによって、ますます魅力的な川高になると信じています。その「川之石高校の魅力化」を皆さんに呼びかけ、第3学期終業式の式辞とします。

令和4年度 第3学期 校内球技大会(あいさつ)

2023年3月15日 11時54分

 3月14日(火)に第3学期校内球技大会を実施し、サッカーとバスケットボールの競技で熱戦が繰り広げられました。開会式と閉会式で、それぞれ次のような挨拶をしました。

【開会式】
 今年度最後の校内球技大会です。そして、2年次生と1年次生だけで行う初めての学校行事でもあります。4月から、それぞれ最上級生と中心の年次生となる皆さんには、身を引き締めて大会に臨んでほしいと思います。
 これまで度々話をしてきたように、校訓の一つである「誠実」を胸に、「対戦相手を敬い、ルールと審判を尊重し、スポーツを楽しむ」、その「リスペクトの精神」を発揮してください。また、今後、上級生としてリスペクトの精神を下級生に伝え、川高をますます魅力的な学校にしてください。
 今日も、感染症予防のための手洗いや手指消毒、マスクの着用などを適切に行い、楽しく充実した大会にしましょう。以上で、開会のあいさつとします。

【閉会式】
 皆さん、楽しく充実した一日となりましたか。
 1学期の大会で話したことを、改めて伝えておきます。本校では、「スポーツ大会」ではなく「球技大会」としています。今日のサッカーやバスケットボールをはじめ、球技種目は、仲間と力を合わせ一緒になって勝負を競いながら楽しさや喜びを味わうことができます。ですから、大会種目に球技を選び、体力の増進とともに、よりよい仲間づくりを目指し、球技大会を行っています。
 その大会で感じたことや思ったこと、考えたこと、学んだことを、これからの授業や行事、部活動などに生かしてください。
 終わりに、大会の準備や運営に協力してくれた生徒の皆さん、ありがとうございました。感謝の気持ちを伝え、閉会のあいさつとします。

図書館報第78号 掲載文

2023年3月3日 09時10分

 令和5年3月1日に発行した川之石高校図書館報に、「日常を生きる」と題した文章を掲載しました。

 2023年元旦に、ある新聞記事を切り抜いた。ベラルーシのノーベル賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんへのインタビューを特集したものだ。 
 アレクシエービッチさんは、ウクライナ人の母とベラルーシ人の父のもとで生まれた。現在はドイツで事実上の亡命生活を送りながら、ロシア語で執筆活動を続けている。「本当にロシアが大好き」な彼女は、ベラルーシの協力を得たロシアによるウクライナ侵攻を知った時に「涙がこぼれた」という。そして、この侵攻を、ロシア軍が占領した街で残虐な行為が繰り返された状況を踏まえ、「人間から獣がはい出しています」と表現している。ただ、ロシアを憎むウクライナ人がロシア文化までも排斥することには、その背景はよく理解できるものの賛同はしないとも語っている。その上で、作家として「『本当に、言葉には意味があるのだろうか』と絶望する瞬間があります。それでも私たちの使命は変わりません」、「私たちは『人の中にできるだけ人の部分があるようにするため』に働くのです」と話している。
 記事の終わり部分に、「憎しみという狂気」があふれている世界で生きる私たちは、「文化や芸術の中に、人間性を失わないためのよりどころを探さなくてはなりません」、というアレクシエービッチさんの言葉が載せられている。それから、人はどうすれば絶望から救われるのか、という記者の問いに対して、彼女は次のように答えている。「近しい人を亡くした人、絶望の淵に立っている人のよりどころとなるのは、まさに日常そのものだけなのです。例えば、孫の頭をなでること。朝のコーヒーの一杯でもよいでしょう。そんな、何か人間らしいことによって、人は救われるのです。」
 アレクシエービッチさんは、人の中にある「人の部分」、すなわち人間性を信じ、人間を愛している。だからこそ、暴行や拷問、殺害に至ってしまう残虐性や、敵国の文化までも否定する憎しみの感情に支配されない人間を、文学は育み得ると考えるのだ。作家である彼女のよりどころとなる日常とは、社会や時代の犠牲となった「小さき人々」の声につぶさに耳を傾け、それを言葉にしていくことなのだろう。
 日本の詩人・石原吉郎も、社会の片隅でひっそりと営まれる名もないありふれた生活がいかにかけがえのないものであるかを書いた一人である。石原は第二次世界大戦に従軍し、1945年に現在の中国・ハルビン市でソ連軍に「戦犯」として抑留され、冬は零下50度を下回ることもある極寒のシベリアへ送られ、重労働25年の最高刑を受けたが、1953年に特赦によって帰国した経歴をもつ。その彼の詩に、「世界がほろびる日に」という作品がある。

  世界がほろびる日に
  かぜをひくな
  ビールスに気をつけろ
  ベランダに
  ふとんを干しておけ
  ガスの元栓を忘れるな
  電気釜は
  八時に仕掛けておけ

 8年間もの苛酷な状況下で精神的危機と肉体的な苦痛の中を生きた石原にとって、世界がほろびる瞬間まで守るものは普段通りの生活であった。彼もまた、アレクシエービッチさんと同様に、ありふれた日常だけが人を救い人間性を失わないよりどころとなる、と確信していたように思える。 
 読書によって、自分を支えている見方や考え方は深まる。大事なことだと感じ取ってはいても、それを自分の中でうまく表現できないでいることは多い。そのようなときに、自分が感じていることを言い表すような言葉や文章に出会うと、幸せな気持ちになる。少しだけ自信が増し、人に優しくなれるような気がする。
 生きることに喜びと感謝をもち、小さなことやさりげないことを大切にする。これを自分のよりどころとして日常を生きていきたい。