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令和4年度愛媛県高等学校教育研究会数学部会南予支部総会 会場校あいさつ

2022年6月17日 13時18分

 6月15日(水)に川之石高校を会場として、愛媛県高等学校教育研究会数学部会の南予支部総会が開かれました。開会行事の中で、会場校を代表して、ご来校いただいた方々に、次のようなあいさつをいたしました。

 川之石高等学校へようこそお越しくださいました。皆様を大歓迎いたしますとともに、本校にて授業研究や研究協議をとおしてご指導いただきますことに深く感謝を申し上げます。
 さて、正門を入られた際に、校舎の前に美しくそびえたつヒマラヤスギをご覧になられたでしょうか。創立から108年目を迎える伝統ある本校の歴史とともに、生徒たちを見守ってくれている、本校のシンボル・ツリーです。
 空に向かって梢を高く伸ばすためには、それを支えるための根を地中深く広げなければなりません。本校では、このヒマラヤスギのように、生徒たちが高い志を持って日々の教育活動に一生懸命取り組み、私たち教職員も、そのような生徒たちの成長を精一杯、支えています。
 本会が、皆様にとりまして、教科の専門性をさらに深め広げ、生徒の力をより高く伸ばすための研鑽の場となりましたら、会場校としてこの上ない喜びでございます。本日は、どうかよろしくお願い申し上げます。

 

令和4年度第1回生徒総会並びに家庭クラブ総会 あいさつ

2022年5月7日 11時31分

 5月6日(金)の6時限目、ホームルーム活動の時間に、今年度の第1回生徒総会並びに家庭クラブ総会を校内放送にて行いました。両総会を開始するに当たって、生徒の皆さんに次のようなあいさつをしました。

 生徒会と家庭クラブ、それぞれの組織と活動はともに、生徒の皆さんの、皆さんによる、皆さんのための組織であり活動です。このあと、それぞれの総会で、令和3年度の行事や決算についての報告と、令和4年度の行事計画や予算についての審議が行われます。自分自身のための総会なのだ、という意識を持って臨んでください。
 また、生徒会の執行部役員及び各種委員会役員の生徒の皆さんと家庭クラブ役員の生徒の皆さんには、これまで様々な活動を自主的・積極的に企画してくださり、本日の総会の開催に当たっても準備や運営をしていただき、心からお礼を申し上げます。
 生徒の皆さんに大いなる期待と感謝をお伝えし、二つの総会が実りあるものとなることを願っています。

令和4年度第1回農業クラブ総会 あいさつ

2022年5月7日 11時08分

 5月6日(金)の2時限目、本校武道場にて、農業科目を選択している生徒たちでつくられる農業クラブの今年度第1回総会が行われました。成人代表として、クラブ員である生徒たちに、次のようなあいさつをしました。

 授業で農業を学んでいる皆さんは、日本学校農業クラブ連盟(FFJ Future Farmers of Japan)の一員です。総会資料の1ページ目にも載っている「FFJの歌」の3番の歌詞に、「香る大地に がっちりと 学と業とを両の手に 伸びる生命の 逞しさ」という言葉があります。「学と業とを両の手に」、すなわち「勉学」と「実践」、その両方に一生懸命取り組む若者が生き生きとたくましく成長する、という意味です。
 川之石高校にも、108年前に創立されて以来、「実践」を重んじて「体験」から学び、「人格」を養う、という校風が受け継がれています。 
 この「川高」で、農業クラブ員として活動している皆さんには、「FFJの歌」と川高の校風を忘れず、充実した学校生活を送り、自分の力を十分に伸ばしてほしいと思います。

 

1年次校内集団研修での講話

2022年4月28日 08時28分

 4月27日(水)、1年次生校内集団研修を実施しました。その中で、これから3年間、川之石高校(川高)で学ぶ1年次生に、次のような話をいたしました。

 入学式から2週間が過ぎました。緊張が解けず、落ち着かない気持ちで学校生活を送っている人は多いでしょう。新しい環境や人間関係が始まるときは、誰もが不安や心配などで心と体がとても疲れるものです。自分の力を信じて、焦らずに少しずつ高校生活に慣れていってください。
 今日は、約30年前、私が教員になったばかりのころに、同じ学校に勤めておられた先輩教員からお聞きした話を紹介します。新入生の皆さんにとって、少しでも参考になればうれしいです。
 その先輩教員は、かつて、ある高校で柔道部の顧問をされ、ご自身も柔道経験者であり、その柔道部は県大会で常に上位入賞を果たす強い部でした。あるとき、高知県で合宿をされ、泊った旅館に、高知県のある高校の野球部も宿泊していたそうです。そして、夕食時に、その旅館の主人と話をしていると、同じ宿に泊まっていた野球部について、「あの野球部は、これから強くなりますよ」と言われたのだそうです。先輩教員が「なぜですか」と聞くと、「スリッパの脱ぎ方でわかります」と言われたので、見に行ってみると、自分の学校の生徒たちのスリッパが乱雑になっている一方で、野球部の生徒たちの分は、きれいに並んでいたそうです。やがて本当に、その高校の野球部は甲子園出場を繰り返す強豪校になりました。
 当時の私が先輩教員の話から学んだことは、まず、何事も丁寧に行うことが大事であるということです。スリッパの脱ぎ方に気を配るとは、細かなことにまで意識を向けるということです。部活動の試合でも、対戦相手の状況をしっかりと把握し、変化を見逃さないことはとても重要です。
 次に、自分の発言や行動によって相手がどのような気持ちになるかを考え、相手のことを思う誠実さが大切である、ということです。先ほど話した旅館の主人は、礼儀正しいあいさつをして履物をそろえるなど、周りの人の気持ちが明るくなるような行動に努める部員たちの行いや心配りをみて、多分、その野球部の活躍を期待し、応援したい、と思われたことでしょう。人は誰でも、誠実な行いをする者に対して好意をいだき、手助けをしたくなるものです。本校の校訓の一つは、その「誠実」です。自分のことばかりを考えるのではなく、真心をもって人と接し、自分と同じように他の人も大事にする誠実な心を、どうか大切にしてください。
 今日は、二つのことを話しました。一つは、何事も丁寧に行うことが大事であるということ。もう一つは、相手のことを思う誠実さが大切であるということです。皆さんが、このことを忘れず、楽しく充実した学校生活を送られることを心から期待しています。

令和4年度 愛媛県立川之石高等学校 第75回入学式 式辞

2022年4月13日 09時10分

 4月11日(月)に、令和4年度 愛媛県立川之石高等学校 第75回入学式を行いました。式辞の中で、新入生並びに保護者の皆様に、次のような話をいたしました。

 暖かい春の季節を迎え、新緑の若葉がまぶしい今日のよき日に、PTA会長・ 宇都宮 雅恵 様の御臨席を賜り、多くの保護者の皆様の御出席のもと、令和4年度愛媛県立川之石高等学校 第75回入学式を挙行できますことは、本校教職員一同の大きな喜びでございます。心からお礼申し上げます。
 ただ今、入学を許可いたしました87名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんの入学を心から歓迎いたします。また、保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。お子様の晴れの日を迎えられ、お喜びもひとしおのことと存じます。衷心よりお祝い申し上げます。
 本校は、大正3年に実践農業学校として開校し、それ以来、「実践」を重んじて「体験」から学び、「人格」を養成する、という校風を脈々と受け継ぎ、創立108年目を迎える、歴史と伝統のある学校です。1万7千名を超える卒業生が、地元はもとより全国各地で活躍されています。新入生の皆さんには本校で学べることを誇りに思うとともに、本校の生徒としてこれからの三年間、自分の力を十分に伸ばし、その力を精一杯発揮しながら充実した高校生活を送ってほしいと願っています。
 その高校生活の始まりに当たり、新入生の皆さんが学校行事などで大切に歌うこととなる、本校の校歌について話をします。1番から3番まである校歌は、いずれも、母校・川之石高校を称える、「ああ わがまなびや」という言葉で締めくくられます。そして、その言葉の前には本校の三つの姿がそれぞれ掲げられ、1番は「ふかき真(まこと)を きわむるところ」、2番は「清き心を はぐくむところ」、3番は「若き力の のびゆくところ」と歌われます。すなわち、川之石高校は、1番では、本当に大切なことを一生懸命に追究することのできる学校であること、2番では、明るく素直で誠実な心を大事にする学校であること、3番では、一人ひとりの力を高め存分に発揮することのできる学校であることを宣言しています。それは同時に、本校の生徒が、本当に大切なことを追究し、誠実な心を大事にし、自分の力を高め発揮していることを意味しています。
 新入生の皆さんには、校歌を歌うたびに、そのことを思い返してほしいと思います。周りの雰囲気に流され目先の楽しさにとらわれそうになったとき、自分にとって本当に大切なことは何だろうと考えてみてください。また、自分のことばかり考えいつも自分を優先するのではなく、真心をもって人と接し、自分と同じように他の人も大事にする誠実な心を大事にしてください。そして、勉強へのやる気が起きなくて困ったり、友達との関係で悩んだりしたときに、自分の力を信じて前向きな一歩を踏み出してください。私は、皆さんが川之石高校の3年間で、一周り大きな自分に成長されることを心から期待しています。
 ここで、保護者の皆様にも、お伝えしたいことがございます。新型コロナウイルス感染症の影響で、学校教育においても様々な制限や制約が課せられています。しかし、そのような中にあっても、私たち教職員一同は力を合わせて知恵をしぼり工夫をこらしながら、お子様の学びを支えて参ります。そして、「生徒にとって満足度の高い学校」、「保護者にとって信頼できる学校」、「地域にとってなくてはならない学校」であり続けます。
 お子様は、これから一歩一歩、自立への道を歩むことになります。心の優しい、生きる力を持った若者に育つことは、御家庭と学校の共通の願いです。子供たちの豊かな未来に向けて、御一緒に力を注いで参りたいと存じます。ここにあらためて、本校の教育活動に対する御理解と御支援を賜りますようお願いを申し上げ、式辞といたします。

  令和4年4月11日
  愛媛県立川之石高等学校長  佐々木 進

令和4年度 第1学期始業式 あいさつ

2022年4月9日 10時57分

 4月8日(金)、体育館に新2年次生と新3年次生、教職員が集い、令和4年度第1学期始業式を行いました。式辞の中で、生徒たちに次のように語りかけました。

 令和4年度の新学期が始まります。3年次生は高校生活のまとめの一年です。授業や部活動、学校行事など一つ一つ丁寧に取り組みながら、自分の希望する進路を考え、選び、挑戦し、実現させてください。2年次生は、中心的な役割を担い、上級生を助け下級生を支えながら、誰にでも優しく接して、生き生きとした学校生活を送ってください。
 新型コロナウイルス感染症は、第7波への警戒が高まっています。生徒の皆さんは、これまでの基本的な感染回避行動を徹底して実践してください。特に、マスクの着用はとても効果があり、熱中症に気をつけながら、登下校や部活動の休憩のときなども、できるだけマスクをしてください。感染回避行動は、自分自身を守るだけでなく、身近な家族や友人はもちろん、授業や行事、大会が近づいている部活動などの教育活動を守ることにもつながります。皆さんの自主的で積極的な取り組みを強くお願いします。
 さて、先月の第3学期終業式の中で、ある話をしました。本校の卒業生に、「あなたにとって、先輩から受け継ぎ後輩につなぎたいバトンは何ですか」ときくと、「努力を続けるということです」との答えが返ってきた、という話です。皆さんには、そのバトンを握りしめて勉強や部活動に一生懸命に取り組み、いつか同じように、そのバトンを後輩たちに渡してもらいたいと思っています。
 そして、努力を続ける中で、心がけてほしいことがあります。それは、周りの人の気持ちを想像する、ということです。いつも自分のことだけを考え、常に自分を優先していると、周りの人の気持ちや状況などを想像できる、心の広さや深さがなくなります。皆さんには、誰かが、皆さん自身の気持ちや状況を想像してくれた上で、皆さんに寄り添った言葉がけや行動をしてくれた、という経験はありませんか。私は、ありました。そして、その人を心から尊敬して憧れましたし、自分も、そうありたいと強く思いました。自分がされて嫌なことは人にはしない。自分がされてうれしいことを人にもする。これは、人間の大切なルールです。
 皆さんが、周りの人の気持ちなどを想像しながら自分の目的に向かって努力を続け、自らの夢や希望をかなえることを願い、応援し、第1学期始業式の式辞とします。

川高の生徒の皆さんへ

2022年3月31日 09時39分

 生徒の皆さん、春休みをどのように過ごされていますか。来る4月・5月に行われる大会に向けて部活動を頑張っている人。新しい年次への備えをしている人。将来の進路について考えたり調べたりしている人。卒業した3年次生の中には新しい場所へ旅立った人もおられるでしょう。それぞれに充実した休みにしてください。生徒会誌『たちばな』の巻頭言に書いた「ヒマラヤスギが見守るもの」を載せ、皆さんにエールを送ります。


 令和3年12月末、学校に一本の電話がかかってきました。ご一報くださった方の話では、八幡浜市内の交差点で、車いすを使用している人が転倒され、とっさに本校の男子生徒が助けた様子を見られたのだそうです。どうしても、そのことを学校に伝えたくて連絡をくださった、ということでした。電話を受けた教員のうれしそうな声での報告を聞きながら、体の芯から温かくなるような深い喜びに満たされました。困っている人を見て、当たり前のように善きことを行う川高生。本校生徒にこうあってほしいと願う姿を生徒自身が示してくれたのです。このようなできごとに立ち会えることが、教員にとっての幸せです。
 私の敬愛する先輩が、折に触れて書き送ってくださる言葉があります。それは、農学者・教育者であり国際人でもあった新渡戸稲造が作った、「見ん人のためにはあらで奥山に おのが誠を咲く桜かな」という歌です。人が足を踏み入れることのない山奥に自生する桜は、誰に見せるでもなく自分の真実の姿(花)を咲かせる、という意味に解釈しています。そして、その歌が添えられた便りをいただくたびに、常に自らの生命をみなぎらせる桜の美しい花を想像しつつ、「誰も見ていない、気付かないときこそ誠実であろう」、というエールとして受け止めています。
 先の生徒は、人が見ているから、ほめられたいから、知り合いだからではなく、誰かが見ていようが見ていまいが、困っている人が誰であれ、その人の置かれた状況を見て、その人の立場に立ち行動したのでしょう。報告を受けたとき、新渡戸の歌が頭に浮かびました。そして、奥山で咲く桜の人知れぬ「誠」に美しさを感じた新渡戸がそれを歌にしたのと同様に、当然のように人助けをする生徒の誠実さに心打たれた方が、わざわざ伝えてくださったのだと思いました。

 これまで、入学式や各学期の始業・終業の式辞、集団研修や川高祭などのあいさつの中で、本校の校訓に触れ、その三つの言葉に託されていると思える、願いについて話をしてきました。
 一つ目の「誠実」には、真心をもって、誰とでも接し、何事にも取り組み、自分を大事にしながら他の人も大切にする、心の大きな人になってほしい、という願いが込められています。フランスの小説家・アルベール=カミュの作品『ペスト』には、疫病と戦う人たちの行動を通して、人間の力では解決困難な状況を乗り越えるために、私たちはどのように生きるべきかが描かれています。主人公の、「ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」「僕の場合には、自分の職務を果たすだけです」、「原動力となっていたのは、ささやかな仕事で役に立ちたいということだけでした」などの言葉から、どのような状況でも自分のすべきことに丁寧に取り組む、その誠実さこそが最も大切である、という作者の考えが読み取れます。現実においても、世界規模で流行している新型コロナウイルス感染症対策に日々取り組んでいる今、予防策を含め自分のすべきことを行い続ける私たち一人ひとりの誠実さが試されています。
 二つ目の「審美」には、物事を正しく見分け、美しいことに気付き、明るく前向きな気持ちになってほしいということ、特に、人の優しさの中に美しさを見いだし、「人間には嫌な面はあるけど、素敵ですばらしい面がある」とか、「人生には辛く悲しいことはあるけど、楽しくうれしいことがある」ということを知ってほしい、という願いが込められています。昨年の11月に行った川高祭は、どの企画も創意工夫がなされ、一生懸命に練習や準備がなされたことの分かるすばらしいものでした。演奏やパフォーマンス、展示作品はもちろんのこと、柔軟な発想力、難しいことに挑戦する勇気、高い完成度を目指す真面目さ、参加者に楽しんでもらおうとする思いやり、展示物や演奏などを熱心に見たり聴いたりする実直さなど、生徒たちの活動や振る舞いはいずれも、自分のためだけではなく誰かのためのものです。そこに深い優しさと美しさを感じました。児童文学作家の斎藤隆介は、『花さき山』で、人間が思いやりの気持ちをもって優しいことを一つすると美しい花が一つ開き、そのような花が一面に咲いた山の話を書いています。『花さき山』は、優しい行為が気高く美しいものであること、多くの人が見返りを求めることなくそのような行いをしていて、どこかで花を咲かせていることを教えてくれます。優しいことをした者、された者、それを知った者、それぞれの心の中に「花さき山」はあるのでしょう。川高祭の当日、私の中の花さき山に、たくさんの花が開きました。
 三つ目の「自学」には、自分から学び、判断し、行動する力を身に付け、どのような大人になりたいかを考えながら、自ら人生を切り拓く、たくましさを持つ人になってほしい、という願いが込められています。昨年の夏から冬にかけて、就職や進学を志望する3年次生に面接練習を行いました。中には、校長室を何度も訪れ、面接練習を望む生徒もいました。誰もが真剣に、自分の適性や能力について考え、受験する企業や職種、学校や専攻分野について一生懸命に調べていました。そのような、自学をすることで成長著しい生徒たちに、面接の心構えを繰り返し話しました。それは、あなた自身の将来にかかわることで時間と労力をかけてくださっている企業や団体、学校の関係者への感謝の気持ちと、自分のことをわかってほしいという気持ち、その両方を忘れずに面接に臨んでほしいという内容でした。誠実な気持ちは生徒自身を内面から磨き、必ず面接官に伝わると思っています。私の話を聞く生徒たちの表情や態度から、自分にとって大事なこととして学んでくれたことが分かりました。

 校訓の三つの言葉は、それぞれ深く結びついています。誠実であろうと努め、それを見分ける審美眼を養うために自ら学ぶ。皆さんには、これからも心豊かに一日一日をおくり、誰かと力を合わせて生きること、それを楽しむ人であってほしいと思います。
 人間には、自分たちの力を超えた、神々しささえ感じるような自然物が必要だと考えています。なぜなら、人間に自らの有限性を自覚させ、思い上がりを自戒させる存在だからです。私は、本校の大きく美しいヒマラヤスギを初めて見たとき、その荘厳さに圧倒され、魅了されました。そして、昨日と今日とでは見分けがつかないほどの生長を100年間続け、今の姿に至ったことに胸を打たれました。
 3年次生の皆さん、卒業おめでとうございます。このヒマラヤスギは、これからも皆さん一人ひとりを見守っています。

令和3年度 第3学期終業式 式辞

2022年3月18日 20時17分

 3月18日(金)に、第3学期終業式を行いました。式辞として、次のような話を生徒たちにしました。

 おはようございます。今年度も、あと少しとなりました。勉強や部活動などで目標を立て、何かに取り組み続けている人は多いでしょう。
 私も、皆さんにならい、4月から続けていることが、いくつかあります。そのうちの一つは、校長室に四つある、鉢植えの胡蝶蘭を大事にすることです。胡蝶蘭は、温度や湿度の管理が必要なため、温室以外の場所で育てるのは難しく、美しい花の時期が終わると、枯れてしまうことも多いそうです。贈ってくださった方の気持ちがありがたく、できるだけ長く生かしたいと思い、定期的に水や液肥をやり、毎日、仕事の前や後に、日差しを浴びせたり、冬場の朝と晩には、比較的暖かい場所へ移動させたりと、植物の気持ちを想像しながら、世話を続けました。
 すると、初めのころは、花を咲かせることを目標にしていたのが、やがて、葉の色つやがよいことだけでも、うれしいと感じるようになりました。今では、花芽が伸びたものも、花芽が出なかったものも、同様に愛おしく思います。
 あることに取り組み続けると、それまでの感じ方や考え方が広がったり、深まったりします。皆さんも、そのことを、勉強や部活動などをとおして実感したことはありませんか。去年の6月に行われた県高校総体のスローガンの中に、「バトンをつなぐ」という言葉がありました。インターハイに出場した本校の3年次生に、「あなたにとって、先輩から受け継ぎ、後輩につなぎたいバトンは何ですか」ときくと、「努力を続ける、ということです」との答えが返ってきました。よく耳にする言葉ですが、そのときは、とても力強く響き、感動しました。
 川之石高校には、107年前に創立されて以来、受け継がれている伝統があります。それは、「実践」を重んじて、「体験」から学び、「人格」を養う、ということです。生徒の皆さんには、これからも、目標を立て、それに向かって努力を続け、自分自身を高めてほしいと思います。そのことを心から願い、第3学期終業式の式辞とします。

第3学期校内球技大会あいさつ

2022年3月16日 17時15分

 令和4年3月15日(火)、絶好のスポーツ日和の中で、第3学期校内球技大会を開催しました。1年次生と2年次生の皆さんに、次のような話をしました。

【開会式】
 今年度、最後の校内球技大会です。これまでの大会と違い、3年次生がいないので少しさみしい気はしますが、2年次生と1年次生だけで行う初めての学校行事となり、4月から最上級生となる2年次生の皆さんと、中心学年となる1年次生の皆さんにとって、早めに気持ちを切り替え、自分を高めるチャンスでもあります。
 前回の球技大会のあいさつの中でも話したように、「対戦相手を敬い、ルールと審判を尊重して、スポーツを楽しむ」、その誠実さを、この大会でも持ち続けてください。相手を大切にする人は、相手からも大切にされます。部活動で成果を上げる、資格を手に入れる、進路実現を果たす、いずれも自分ひとりの力では成し遂げることはできません。何事もチームワークが大事です。皆さんが一つのチームとなり、川高をますます魅力的な学校にしてくれることを、心から期待しています。
 これまで同様に、感染症予防のための「マスク着用」「手洗い」「手指消毒」に努め、楽しく有意義な大会にしましょう。

【閉会式】

  絶好のスポーツ日和の中、楽しく思い出に残る球技大会となりましたか。スポーツをしているときは、心も体も競技に集中し、我を忘れていたと思います。その、「一瞬一瞬に集中する」ことを何事においても大事にしてください。そのような取り組み姿勢での、努力の継続が、勉強や部活動において、すばらしい結果を生み出します。
 今日も含め、これまでの校内球技大会で学んだことを、どうか今後に生かしてください。
 大会の準備や運営に
協力してくれた生徒の皆さんに感謝の気持ちを伝えて、あいさつとします。

図書館報第77号掲載文

2022年3月7日 14時31分

 令和4年3月1日に発行した川之石高校図書館報に、「小さく弱いもの」と題した文章を書きました。

 本を読みながら目頭が熱くなることがよくある。人の優しさや生きる悲しみが感じられる話に涙腺が緩む。特に、幼い子の無垢な優しさや健気さ、悲しみに触れると、涙が止まらない。
 『小さな勇士たち-小児病棟ふれあい日記-』(NHK「こども」プロジェクト)に収められた話の中に、5歳の素平(そへい)さんと司(つかさ)さんとの絆と、二人の「命の輝き」が書かれている。
 素平さんは3歳の時に小児がんを患い、寝たきりの闘病生活となった。そして、頭部にできた腫瘍が視神経を圧迫し目が見えなくなった。それでも周囲の人びとの状況を敏感に察知し、ユーモアにあふれた言葉をかける。一方、司さんは、足を骨折して1か月ほど個室に入院後、素平さんのすぐ隣のベッドに移ってきた。初めての入院で、個室にいたころはギプスをして動けず、しばらく泣いてばかりの毎日が続いた。
 やがて司さんは、目の見えない素平さんに、人が来たことを教えたり、耳で聞いて遊べる言葉遊びに誘ったりするようになった。素平さんは、司さんの優しさに「ありがとう」と応え、心の底から楽しそうな表情で一緒に遊んだ。
 二人の関係は、司さんが素平さんを助けてあげていると思われたが、司さんもまた、素平さんによって助けられ、救われていた。自分よりもはるかに辛く苦しい状況にある友達が懸命に頑張っている― その姿を間近に見ることが司さんを強く、そして優しくさせた。
 残された時間がそう長くはない素平さん。ご家族は、最期まで病院で過ごさせることを決断された。治る気でいる素平さんにとって、治療を続けるということに大きな意味があり、周りの人たちと楽しい言葉を交わすことが、本人には最も幸せなことと考えたからだ。
 ある日、司さんは、取材者に車いすに乗せてもらい、本を持って素平さんに尋ねた。「素平くん、そっちに行っていい?」素平さんは、首に転移した腫瘍がはれてきて、声があまり出なくなっていた。声だけでなく体力が少しずつ落ちて、眠っている時間が長くなってきていた。それでも、かすれ声で、「いいよー。司くん、気をつけてきてねー」と答える。本を読んでもらい、物語の世界に入りこんでいった二人は、登場するうさぎについて楽しく話をした。
 素平さんの6歳の誕生日。司さんは、加熱していないものが食べられない素平さんのために、チョコレートケーキを母親に作ってもらいプレゼントした。ほとんど何も口にできなくなっていた素平さんだったが、ケーキをひと切れ、パクっと食べ、かすかな声で言った。「みんなで分けて食べてね…。みんなで食べるとおいしいから…」。誕生日から11日後、素平さんは眠っている間に静かに息を引き取った。
 いつも周囲に気を配り、日常の小さな出来事の中に楽しみを見つけ、辛い治療に耐えて夢や希望を語った素平さん。そんな素平さんの力になり、喜んでもらうことを健気に考え続けた司さん。素平さんの「命の輝き」は、小さく弱い光であったかもしれない。しかし、司さんの心に届き、彼を大きく成長させた。そして私も、二人に人間として大事なものを教えられ、活力や体の機能が低下し衰弱した状態であっても、「気をつけてきてねー」と友達を気遣う素平さんの優しさと悲しみを思い、泣いた。
 読書には、時間や空間を超えて様々な人物に出会える楽しみと喜びがある。そして、大きなことよりも小さなことの中に、強いものよりも弱いものの中に、より大切なものが包み込まれていると信じる私は、それを確かめるためにも本を読む。