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令和3年度1年次集団研修 校長講話

2021年4月27日 07時27分

 本校では、4月26日(月)と27日(火)に校内で1年次生の集団研修を行います。第1日目の26日には、研修の始まりに当たり、私から1年次生の皆さんに話をしました。以下に、その内容を紹介いたします。
 
 今日は、私が小学生と高校生だったころの話を紹介しながら、1年次生の皆さんに伝えておきたい、二つのことを話します。
 小学4年生のときの「図画工作」の授業でのことです。教室の外で風景を描いていた私は、絵の具のチューブから青色をパレットに出し、そのまま空の部分を塗ろうとしました。すると、それを見ておられた先生が私に、「空は青色かなぁ。一つの色で塗ってしまう前に、よく見てごらん。」というようなことを仰ってくださったのです。改めて空をよく見ると、絵の具の青色ではなく、くすんだ白や紫がかった青などが溶け合い、神業のようなグラデーションを成している様子が目の前に広がっていました。そのとき初めて、空を美しいと思いました。先生の言葉は、当時の私にとって、物事の大事なことに気付いてしまった、と思えたほどに衝撃的なものでした。
 高校1年生のときの「英語」の授業での話です。response(レスポンス)という英単語が教科書に載っていて、先生は、単語の意味が「応答」とか「反応」であることを説明された後、もう一つの英単語を紹介してくださったのです。それは、responsibility(レスポンシビリティ)、日本語では「責任」と訳される単語です。そして、次のような話をなされました。レスポンシビリティは、response(応答・反応)とability(アビリティ)が組み合わさった単語であり、アビリティとは(~ができる力)という意味である。つまり、責任とは、「応答・反応できる力」のことをいう。だから、誰かから自分に何らかの働きかけがあった場合は、応答したり応えたりしなくてはならず、私たちにはその責任がある。私は、話を聞きながら、人間の在り方と言葉の成り立ちとが深く関わっていることを知って感動するとともに、「あいさつ」を交わすことはもちろん、人と誠実に向き合うことの大切さを再認識しました。
 紹介した話をはじめとする、これまでの経験を通して、私は二つのことを確信しています。
 一つ目は、気付かなかったことに気付いたり、知らなかったことを知ったりすること、すなわち「学ぶこと」は楽しい、ということです。自分の中で、世界がどんどん広がり、知識や感情の引き出しが多くなっていくと、いろいろな年齢や立場、地域の人たちと話が通じ合ったり、人の気持ちを想像しながら相手を思いやる言動を取りやすくなったりするので、生活の中に喜びが増えます。
 二つ目は、人との出会いによって人生は豊かになる、ということです。私の考え方や生き方は、図画工作や英語を教えてくださった先生をはじめ、多くの方々の影響を受けてきました。そして、立派なことを成し遂げたり、活躍したりした人よりも、身近な人の言葉や態度のなかに、新しくひらめくものや学ぶべきことがあることに気付くことが大切だ、ということも実感しました。クラスの友達や部活動の仲間、先生方のさりげない優しさを感じ取ることができれば、その友達や仲間、先生方との出会いは宝物となるでしょう。
 高校生活の始まった皆さんには、「学ぶこと」と「出会うこと」の楽しさを、たくさん経験してほしいと、心から願っています。