川之石高校PTAだより 第46号「ひまらや杉」
2021年7月31日 09時56分 本校PTAだより 第46号「ひまらや杉」に、「『バトン』をつなぐ」と題した文章を書かせていただきました。
6月に開催された愛媛県高等学校総合体育大会に、本校から95名もの生徒が出場しました。壮行会の校長あいさつの中で、去年の県高校総体が中止となったことに触れ、昨年出場がかなわなかった先輩方の思いを感じ取ったときの自分の気持ちと、今年の県高校総体で試合ができる喜び、その両方を思い出して、弱気になりそうな自分を奮い立たせてほしいとエールを送りました。
今年の県高校総体のスローガンは、「繋(つなぐ)~あの日渡せなかったバトンを、今~」でした。力の限りを尽くして戦う生徒たちを応援しながら、どのような「バトン」を先輩から渡され、後輩につなぐのだろう、と想像しました。県高校総体に続いて四国高校総体でも上位入賞を果たし、全国高校総体(インターハイ)への出場権を勝ち取った陸上部の3年次生に、「あなたにとっての『バトン』とは何ですか」と質問すると、「一生懸命に努力し、それを続けることです」と答えが返ってきました。教える子に教えられることほど教師冥利(みょうり)に尽きることはありません。生徒の話を聞きながら、胸が一杯になりました。
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって、私たちの生活は大きく変わり、「新しい生活様式」が社会全体で模索されています。そのような中、教育に携わる者として「バトン」のようにつなぎ続けるべき姿勢について考えることがあります。そのときによく思い浮かべるのは、宮沢賢治の作品『なめとこ山の熊』の中の、淡い月光に照らされながら母熊が子熊の思い込みや間違いを一つ一つ丁寧に説明しながら正していく場面です。生き物は食べたり食べられたり、すなわち命を奪い奪われたりする中を生きるしかありません。子熊の甘えに調子を合わせたり、機嫌をとったりしない母熊の凛(りん)とした姿からは、そのような世界に生きざるを得ない子熊に、正しく強い生き方を教えておきたいという深い愛情が、切ないほどに伝わってきます。そして、教育もまた、そのような深い愛情と未来を見通した考え方を持って生徒一人一人に向き合うことから始まるのだ、と自分を戒めます。
4月の入学式の式辞の中で、「いつもとかわらず春が巡ってきたように、コロナ禍の中で社会の動きが滞っている間にも、子供たちは成長を続けます」と話しました。教育の「バトン」をつなぎ、教職員一同で力を合わせ、子供たちの学びと成長を支えて参ります。