「図書館報」第79号
2024年3月6日 11時18分「図書館報」第79号に、「活字の楽しみ」の題で、次のような文章を掲載させていただきました。
私の好きな作家の一人に椎名誠さんがいます。椎名誠さんは、その作品が国語の教科書に掲載されたりしているので、皆さんの中にも知っているという人がいるのではないでしょうか。初期の「昭和軽薄体」と呼ばれたエッセイから、「怪しい探検隊シリーズ」等の冒険?小説、「岳物語」等の私小説、「武装島田倉庫」等のSF小説まで、そのジャンルは幅広く、どれも面白く読みやすくいものばかりです。教科書等で読んだことがあるという人も、それ以外のジャンルの作品にも手を伸ばして、ぜひ読んでみてください。
その、椎名誠さんの作品に、「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」というものがあります。あるトラブルをきっかけに、本がない生活など耐えられないというほど読書好きな友人に対して恨みを持った主人公が、報復のためにその友人を味噌蔵に閉じ込め、活字というものを一切読めないようにしてしまう、というお話です。
「活字中毒」という言葉には馴染みがないかもしれませんが、文字を読むことが好きすぎる人や状態を指す言葉として使われています。読書好きで知られ年齢も皆さんと近い、女優でタレントの芦田愛菜さんも、自分自身のことをそう表現し、「読むものがないときは調味料の裏まで読んでしまう」と述べているそうです。
私自身は、よほどでないと調味料の裏まで読もうとは思いませんが、公共施設などに置いてある企業や自治体の広報誌、バスや列車の座席の背もたれに挟んである広告やパンフレットなどには、つい手を伸ばしてしまいます。校長室にも、いろいろなところから学校に送っていただいた広報誌やパンフレットが回覧されてくるのですが、時間がないときには少し手元に置かせてもらうなどして、ほぼ目を通していると思います。
ちなみに、今、手元には、西宇和農協や電力会社、農業クラブの広報誌、地域研究センターによる県内企業経営者へのインタビュー集などがあり、「みかんの宣伝販売車、にしうワゴン」「河野さんの早生みかん、県知事賞受賞」「幻の果実、柚香(ゆこう)」「佐田岬はなはな、地中熱と青石を利用し冷暖房」「あわしま堂、そのターニングポイント」などの記事を楽しく読むことができました。変わったところでは、日本石灰窒素工業会発行の「石灰窒素だより№158」という冊子があり、内容は専門的過ぎてあまり頭には入りませんでしたが、そのネーミングと158号も発行されているということについて楽しむことができました。
このように活字が好きな私ですので、本そのものも、読み終わったからとか古くなったからといってなかなか手放すことができません。先日も、本校の図書館の収蔵本の廃棄リストが回ってきたのですが、本当に廃棄していいのかな、とリストを見直してしまいました。毎年、新しい本が入ってくる以上、廃棄しなくてはならない本があることは分かっていますし、知識や技術そのものが古くなってしまった実用書などについては廃棄も仕方ないと思うのですが、いったん廃棄してしまうと、その本に込められていた知識や作者の思いは、永久に消えてしまいます。そのような目でリストを見て、「郷土史話 百姓一揆」という本については、実物を校長室まで持ってきてもらいました。読んでみると、この西宇和地区という郷土に生きた私たちの祖先が、みんなの命をつなぐために起ち上がった歴史が生き生きと語られていました。廃棄するには忍びなく、今もこの本は手元に置いてありますので、興味がある方はどうぞ。そして、私自身が小中学校時代から捨てられず、自宅の本棚に並べている本やその作者については、またの機会があれば書かせていただこうと思います。