3月1日 卒業式式辞
2019年3月1日 12時00分愛媛新聞 3月1日 8面 卒業生の胸元飾る花を d-20190301001
式辞
日ごと春めき、校庭の樹々に野鳥が飛び交う今日の良き日に、多数のご来賓のご臨席を賜り、平成三〇年度卒業証書授与式を挙行できますことに、教職員一同、厚くお礼を申し上げます。保護者の皆様におかれましては、一八年間健やかな成長を願い、無償の愛を注ぎ、今日の日を迎えられました。ここに、心からの敬意とお喜びを申し上げます。
さて、只今卒業証書を授与いたしました、一一八名の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。
皆さんは、三年間、「自学」「誠実」「審美」の校訓のもと、学業や部活動に励み、充実した学校生活を送りました。いよいよ新しい世界へ羽ばたこうとする皆さんの前途に、二つのお願いをします。
まず一つ目。今から一〇年後、あなたはどこで、どうしていますか。どうなっていたいですか。一〇年後の「理想の自分」を思い浮かべましょう。そしてその自分に向けて、トコトン考え抜く癖を付けましょう。AIと呼ばれる人工知能が活躍する時代、
society5.0 がすぐそこまで来ました。すでにホテルや飲食店では、ロボットが接客し、車の自動運転も試行されます。医療分野でも大量のデータを分析し、病気の診断や治療が飛躍的に進むと言われています。そんな中、ある世界的企業の社長は、「AIに置き換わらない仕事はない、最先端の技術を最速で発展させる」と、その自信のほどを述べています。近い将来、人間の仕事はロボットに奪われてしまうのでしょうか。そんなことを考えながら、先日、誰もいなくなった皆さんのホームルーム教室に入ってみました。後ろの黒板には白色のチョークで4文字、「日進月歩」と書いてありました。代表委員さんの月間目標ですね。
さて、人工知能に「日進月歩」と命令したら、どうなるでしょう。おそらくや、情報不足でフリーズするか「何を」「どのように」と再入力を次々要求するでしょう。しかし皆さんは、総合学習を始めとする、3年間の系列の学習の中で、課題発見と解決の力を習得しました。「何を」「どのように」を自分の頭、「自頭」で考えることを身に付けました。自分の目標に向けて、また周囲の期待にも応えて、あなたならではの、気の利いた新しい価値を創り出しましょう。そうすることで、AIをうまく活用できる人になってください。
二つ目に。他人の喜び、悲しみを自分のこととして感じられる人になりましょう。皆さんは、教科の中で、また部活動単位でも、多くの行事を通して、人を、そして地域を愛し、地域に貢献する活動に取り組みました。例えば、小学生を招いてのヒマラヤ生き生きスクール、また介護施設への訪問、日本農業遺産の認定にまで結びついた、グローバルギャップ、さらには書道パフォーマンス、吹奏楽部の演奏会、美術部による消防署大型防災壁画、メディアに取り上げていただいただけでも、数多くあります。
けして忘れられない出来事、昨年7月には西日本豪雨が起こり、多くの方が被災されました。いまだ復興半ばであり、一日も早い日常を願うところです。あの夏の炎天下、皆さんは自分のことを後回しにして、延べ四〇〇人に及ぶ川高有志が、ボランティアに汗を流しました。皆さんには、人として最もすばらしい美徳が、既に身に付いています。卒業後、さらに地域に還元してくれることを願ってやみません。
AI技術がいかに進もうとも、人でなければ成り立たない温かい社会を築く人になってください。巣立ちいく一一八名、平成最後の川高卒業生が、自分の頭で考える「自頭」と、人としての「最高の美徳」、この二つを携え、来る新しい元号に向けて、優しく逞しく、羽ばたくことを願っています。
結びになりましたが、ご来賓、保護者の皆様に、重ねて感謝申し上げますとともに、本校教育の振興に、引き続きご支援いただきますようお願い申し上げ、式辞といたします。
平成三十一年三月一日
愛媛県立川之石高等学校長 久保浩治