最優秀賞「文部科学大臣賞」を受賞しました!!(福祉サービス系列)
8月6日(木曜日)
愛知県で開催された「令和8年度全国福祉高等学校長会 第30回総会・研究協議会並びに福祉担当教員等研究協議会 あいち・なごや大会」の生徒体験発表本審査に、福祉サービス系列選択の3年次 山川 蛍さんが出場しました。
発表テーマは「『今』を支える喜び」。介護実習中に認知症の利用者さんと関わる中で芽生えた「明日には私のことを覚えていないのに、声をかけることに意味はあるんかな。」という問いをきっかけに、「覚えてもらうこと」より「その瞬間を笑顔で過ごしてもらうこと」へと考え方が変わっていく姿を綴った作文です。
当日は全国から集まった福祉科教員約260名を前に、一人一人の顔を見ながら気持ちを込めて発表し、本大会の最高賞である最優秀賞「文部科学大臣賞」を受賞しました。
この輝かしい結果は、これまで山川さんが積み重ねてきた努力の賜物です。
出場にあたりご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。
山川さんが発表した作文を、本人の許可を得て以下に掲載します。
「今」を支える喜び
「明日には私のことを覚えていないのに声をかけることに意味はあるのかな」 介護実習で初めて認知症の利用者さんと向き合った時、自問自答しました。 実習先のグループホームで出会ったKさんは認知症が進行し、会話をしたことも、私の顔や名前を覚えていただくことも難しい方でした。私は初対面の人と話すことに苦手意識があり、実習当初はKさんとのコミュニケーションが思うようにいきませんでした。質問しても返ってくるのは、「なんも分からん」「覚えていない」という言葉ばかりで、次第にどんな風に会話をすれば良いのか分からなくなりました。そんな私に職員さんが、「Kさんはね、昔みかん作りをしていたのよ。その話をしてみたら?」とそっと教えてくださりました。私は勇気を振り絞って、「みかんを作っておられたのですか」と声を掛けてみました。その瞬間、Kさんの表情がパッと明るくなり、昔のみかん山のこと、収穫のことなど沢山話をしてくださりました。 そして会話の終わりに、「ありがとう、また明日も来てね」と言ってくださったのです。その言葉で自分は人と話すことが苦手だから、と消極的になっていたことが恥ずかしくなると同時に明日もKさんと話がしたいと思いました。
しかし次の日、Kさんに声をかけると「あんた誰よ、勝手に触らんで」と予想もしない言葉が返ってきました。 全てを否定されたように感じ、ただ謝ることしか出来ませんでした。覚えてもらえないことへの寂しさや、何も出来ない自分に落ち込みました。 もうKさんの所へ行くのは辞めようかと悩みましたが、出会った最初の「また、明日も来てね」という言葉が忘れられず、もう一度みかんの話をしてみました。 すると、Kさんは最初のあの笑顔で話をして下さったのです。今こうやって話しているこの言葉も、私のことも、記憶には残らないのかもしれない、それでもKさんの表情から今が嬉しい楽しいという感情が伝わってきたことで私もとても嬉しくなりました。
それから私は声をかける時に、覚えてもらうにはどうすれば良いかではなく、どうすればこの瞬間を心地よいと思ってもらえるか、どうすればその人らしく過ごしていただけるのかを考えるようになりました。 Kさんが笑顔になると私も嬉しくなり、Kさんが安心した表情を見せてくれると、私もあたたかい気持ちになりました。
実習最終日、Kさんに感謝の言葉を伝えました。 Kさんは私の顔も名前も覚えてはいませんでしたが、私の目を見て微笑みながら「なんでか分からんけど、あんた見ると心があったかなるんよ」と言ってくださいました。 その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れそうにになりました。はっきりと記憶には残っていないかもしれないけれど、私との関わりの中で、心地良さやあたたかさを感じてくださっていたのかもしれないと思うと、胸がいっぱいになりました。 人と、笑顔で向き合う瞬間に生まれる喜びやあたたかさは、認知症であってもそうでなくても全ての人が同じように感じるのだと言うことに気付かされた介護実習でした。
人は誰もが歳を取り、いつかは支えられる側になるかもしれません。記憶も曖昧になり、大切な人の顔も名前も思い出も忘れてしまうかもしれません。自分もいつかそうなるかもしれない、以前の私はそう思い怖くなる時がありました。でも、今は違います。私がそうなっても介護の人達の力で、この瞬間が嬉しかったり楽しかったりほっとできたりするのであれば、怖くありません。Kさんとの関わりは、私の介護に取り組む考え方を大きく変えてくださいました。これからも多くのことを学び、私の介護を通して一人一人の今を支えられるような介護福祉士を目指して歩んでいきたいと思います。